生体関連化学

生体分子の機能を解明し、その制御方法や活用方法を開発


中野修一 先生

甲南大学 フロンティアサイエンス学部 生命化学科/フロンティアサイエンス研究科 生命化学専攻

どんなことを研究していますか?

生体関連化学は、生体分子の構造や機能を化学的に解明したり、生体分子をバイオテクノロジーやナノテクノロジーに利用したりするための、基礎研究から応用研究までの幅広い内容を含む学問分野です。対象となる生体分子は、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、糖質、脂質など多岐にわたり、化学的に改変させた生体分子を合成する研究も行われています。こうした生体分子や人工分子を使って、細胞のはたらきを解明したり、医療分野や工学分野などに利用したりする試みが行われています。

DNAやRNAの構造決定要因を明らかに

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生体関連化学の分野の中で、私の専門は生物物理化学です。生体分子の機能(働きや役割)を物理化学の視点で解明し、その制御方法と活用方法の開発を進めています。特に、DNAやRNAの構造と触媒機能をコントロールする方法を確立したり、医療分野で使える機能性核酸の設計やバイオセンサー開発に役立つ技術を開発しています。また、細胞内部でDNAやRNAの構造を決定する要因を明らかにし、構造の予測を実現しようという取り組みも行っています。

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研究室の学生が実験試薬を分取

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→化学メーカー、食品メーカー、医療・化学分析会社
  • ●主な職種は→化学分析・測定、品質管理、素材開発、技術営業
  • ●業務の特徴は→理化学機器の操作、数値データの分析
分野はどう活かされる?

分光光度計やクロマトグラフィーなどの機器分析、開発した素材の性能評価、理化学機器の販売、数値データの分析

先生から、ひとこと

生命現象を深く理解するには、生物学の知識だけで十分とは言えません。高校までは理科を生物・化学・物理などの科目に分けて学びますが、それぞれの分野には深いつながりがあります。各科目の関連性を考えながら学ぶと理解が深まります。

先生の学部・学科はどんなとこ

比較的少人数の大学・学部であるため、学生一人ひとりに合わせた指導が実践されています。生命化学科では、生物・化学・物理の分野を融合させた研究が行われており、多様な視点で物事を考える能力と数理的な考察力を身につけることができます。

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研究室の学生と、実験データについて議論中

先生の研究に挑戦しよう

DNAやRNAの構造解明や、DNAやRNAに結合するペプチド・低分子化合物・イオンの探索、酵素の活性測定など、いろいろ考えられます。

興味がわいたら~先生おすすめ本

DNA

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー

著者ジェームス・ワトソンは、DNA二重らせん構造の発見者の一人。二重らせん発見までの彼の研究と、研究者たちの競争について書かれている。二重らせん発見後のDNA研究の進展とヒトゲノム計画についても網羅している。こうした研究が、私たちの生活を大きく変えたことを知ってほしい。「生体関連化学」分野ではDNAを対象とした研究も多い。また、RNAを利用した疾患治療やワクチン開発、バイオセンサーの開発も有望だ。こうした研究を進めるには、化学の視点からの基礎研究がとても重要。分子生物学の入門書としても優れている。 (青木薫:訳/ブルーバックス)


生命とは何か 複雑系生命科学へ

金子邦彦

様々な生命現象(生物の起源、細胞分化、進化など)が数式モデルで説明できることが紹介されている。数式は多用されておらず、理屈や考え方が丁寧に書かれている。「生命とは何か」という問いに答えるには他の分野(化学、物理、数学など)の知識も重要であることを知ることができ、生命体に対する見方が変わる一冊。 (東京大学出版会)


物理法則はいかにして発見されたか

R.P.ファインマン

高校まで学んできた物理学(古典物理学)の考え方とはまったく異なる、20世紀以降の物理学(=物質世界観)に触れることができる。重力法則、量子論の波の考え方、物理法則の対称性など、ノーベル物理学賞者であるファインマン独特の楽しい語り口で物理法則に触れられる。難しい内容もあるが、要点をフォローするだけでも科学的視野が広がる。 (江沢洋:訳/岩波現代文庫)


未解決のサイエンス 宇宙の秘密、生命の起源、人類の未来を探る

ジョン・マドックス

世界屈指の学術週刊誌「Nature」(ネイチャー)の名誉編集長による著書。少し古い本(2000年刊行)だが、20世紀までの科学によって解決された宇宙・生命・脳に関する問題と、21世紀に取り組むべき課題が紹介されている。高校レベルの科学の知識があれば読みこなすことができるだろう。 (矢野創、並木則行、小谷野菜峰子:訳/ニュートンプレス)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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