河川敷には、河川の危険を呼びかける標識が設置されています。河川標識は重要にもかかわらず、「あぶない!」「ここから入っていけない」とただ呼びかけるだけでは、人々にきちんと情報は伝わりません。また、たくさんの標識が設置されることにより、河川景観上の問題など二次的な問題も出てきます。
そこで私はこれらの標識が抱える課題を整理し、情報をわかりやすく伝える表現の検討し、河川標識のデザインルールを作りました(図参照)。国土交通省九州地方整備局のみなさんと議論し、その後、具体的な河川標識のデザインを作成しました。従来の河川標識よりも情報が整理され整然とした印象を持ってもらえるのではないかと考えています。
あらゆるモノ・コト・場がデザインの対象
私の専門はパブリックデザインです。パブリックデザインとは不特定多数の人々が利用するパブリックスペース、例えば街路や駅、公園、文化施設や商業施設などに設置されているモノや空間のデザインをすることです。
デザインはモノの色や形などの造形表現に関わることだと思われる人も多いのですが、デザインとは、それが存在する必要性や価値などを考え、概念として組み立て、どのように私たちの生活の中に存在させることが有用か、考えるものでもあります。生活に関わるあらゆるモノ・コト・場がデザインの対象なのです。
私は、河川敷標識のデザインのような、不特定多数の人々に価値をもたらすことを目標に、情報提供の方法や手段などについて様々な提案をしています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→メーカー、インフラ系企業、広告代理店、設計事務所等
- ●主な職種は→総合職、デザイン職
- ●業務の特徴→思考を繰返し、何かしらを生み出す仕事をしている人が多い
分野はどう活かされる?
デザインは対象とする領域が広いので就職も幅広いです。メーカーや設計事務所、インテリア関係の会社にデザイン職として就職する人もいれば、近年はインフラ系企業(鉄道、電力等)や広告代理店、放送局等に総合職として就職する人も多いです。
デザインを学ぶ際に習得する「自分で課題を見つけ、たくさんの情報を収集し、俯瞰し多角的な視点から考え、解決策を提示する」デザインの基本的な思考が、いずれの企業でも非常に役に立っている様子です。
総合職で就職した人は、最終的には企画やマーケティング等の部署に配属されるケースが多く、インフラ系企業では、まちづくりに関係する事業を行っている場合が多いため、そういった部署に配属されるケースが多いようです。
様々なことに興味を持ち、「どうして?」と感じる力を身につけてください。現在の生活は非常に便利で豊かになり、不便を感じることは少なくなっています。また、日常の生活の様々なことについて、「これが当たり前」と思ってしまいがちです。しかし、デザインするためには、当たり前を「どうして?」と思う能力が欠かせません。日常の生活の中で触れる様々なモノやコト、場に対して、「どうしてこれはこんな形なのだろう?」「どうしてこれはこういうふうになっているのだろう?」と、「どうして?」を考えることを癖にすることをお勧めします。