生体医工学・生体材料学

心臓突然死を招く心疾患を早期発見する!高精度の診断システムの開発


小林宏一郎 先生

岩手大学 理工学部 システム創成工学科 電気電子通信コース/総合科学研究科 理工学専攻

どんなことを研究していますか?

心臓の疾患は、がんに次いで日本人の死亡率の高い病気です。また、マラソンや各種スポーツ選手が突然倒れて亡くなってしまうニュースを聞いたことがあると思います。マラソンを走れる人の心臓が悪いとは、だれも想像もできないと思います。

これは突然死と言って、何らかの原因で心臓に正常でない状態が隠れていると考えられています。この状態を発見できれば、治療や対策を取ることによって、突然死は防げると考えられています。また、様々な病気は、早期発見して治療することによって治ることが多いです。

これらの心臓の異常を早期発見して、治療や対策をすることによって、健康に過ごせることはとても幸せなことです。

心臓から発生する微弱な電気活動をもとに診断

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その方法として私は、心臓から発生する微弱な電気活動を、超高感度の磁気センサで磁界として測定する診断装置の開発と診断技術の研究を行っています。それによって心臓病の電気現象の詳細な診断が可能になり、心疾患の早期発見ができるようになりました。

これまでこの診断装置の設置は、非常に高価で大掛かりなものでしたが、簡便な装置の開発で、通常の病院でも計測が行えることを示しました。また早期診断によって心臓病による死亡率を下げることができることや、胎児の不整脈診断などの臨床での利用が期待されます。

目標は、心臓突然死のメカニズムの解明によって突然死をなくすこと、そして胎児心疾患の発見・治療によって死産をなくすことを目指しています。

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カメラを用いた呼吸・心拍計測の様子

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→大手電機メーカー、医療機器メーカー
  • ●主な職種は→製品開発者
  • ●業務の特徴は→設計をメインとして、新たな機器の開発を行う
分野はどう活かされる?

ノーベル賞を受賞した田中耕一さんの勤めている島津製作所にて、たんぱく質などの分析装置を開発している卒業生がいます。多くの医療機器メーカーで卒業生が活躍しています。

先生から、ひとこと

私の研究している人間医工学分野は、電気、情報、機械、医学など様々な分野の研究者が協力して、新しい医療機器、健康機器の研究・開発を行っています。そのためには、まず自分の専門知識や技術をしっかり身につけ、それを用いて異分野の専門家と協力していくことが大切です。この研究分野は、様々な人と交流が持て、さらに患者さんを助けられる幸せを感じることができる分野であり、人を幸せにできる大変やりがいのあるものです。

先生の学部・学科はどんなとこ

電気電子通信コースでは、電気回路や電子回路の基礎から応用までじっくり学ぶことができます。また、通信技術や情報処理技術を学ぶための講義が用意されています。これらの基礎知識を用いることによって、様々な分野へ応用することができます。

私の研究分野である医療分野において、心電計やMRIなどの診断装置は電気電子を学んだ技術者が開発を行っています。さらに、計測した信号を分析して、病気の診断などに応用する情報解析技術も行っています。最近では、人工知能(AI)を用いた高齢者の行動解析の研究も始めています。

電気電子通信技術は、世の中の様々なものになくてはならないことは皆さんも知っていると思います。停電で電気の大切さを実感した人も多くいると思います。しかし、電気技術は目に見えないものが多く、分かりにくいと思う人もいるかもしれません。その目に見えないものを利用して、世の中に役立つものを作り出す楽しみが電気技術の分野にはあり、研究の楽しさになっています。

先生の研究に挑戦しよう

まず、自分の体の信号を計測する電子回路の製作を行い、電子工学の知識や生体工学について学ぶ。一番簡単なので、心電計の製作を行ってみましょう。

また、発光ダイオード(LED)と受光素子(フォトダイドードヤフォトトランジスタ)を用いた、脈波計測装置を作成してみよう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

トランジスタ技術

エレクトロニクスの総合雑誌。高校の物理で習う電気回路の知識を応用した上で、少しだけ新しい知識を学ぶことで、身の回りの様々な電子機械を作成することができる。まずは、雑誌に載っている回路を真似して、実際に作ることによって、学んでみてほしい。ラジオ、スピーカー、心電計などを簡単に作ることができ、電子工学の面白さを実感できるだろう。生体計測技術が紹介されている特集もある。 (CQ出版)


プロジェクトX

NHKのドキュメンタリー番組。新製品開発や社会的事件、巨大プロジェクト開発などを徹底的に取材し追っている。日本人の開発者の心意気や、挑戦・努力することによって、新たな技術が生まれることの実際を知ることができる。 (NHK)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。