みなさんは地域の図書館を利用していますか。公共図書館は、地域住民の生涯学習を支えるコミュニティ・メディアです。体系的に組織化された情報が司書という情報専門職によって提供される点で、公共図書館はとてもユニークな文化施設なのです。私はこれまで図書館が地域にとけ込んだ北アメリカや北欧諸国およびヨーロッパ北部の公共図書館を対象に研究を行ってきました。
図書館が情報への平等なアクセスを保障する存在に
例えば、格差のない平等な社会の確立を社会政策として掲げてきた北欧諸国では、公共図書館も情報への平等なアクセスを保障する機関として存在してきました。そのため情報にかかわるギャップを埋める機関として社会的に認知され、生涯学習の拠点として住民から高い信頼を得ています。そんな北欧図書館のあり方を、『デンマークのにぎやかな公共図書館』、『文化を育むノルウェーの図書館』、『読書を支えるスウェーデンの公共図書館』にまとめました。
今後は、社会的・経済的・文化的に困難な状況にある人びとへの図書館サービスに焦点を当てて、研究をしていきたいと考えています。図書館がどのようにして不利な条件にある人びとを支えることができるのかを解明することで、文化と情報の格差克服の実現に貢献したいと思っています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→公務員
- ●主な職種は→図書館職員
- ●業務の特徴は→図書館の仕事を専門的に行う職種
分野はどう活かされる?
図書館職員として
21 世紀の図書館の存在意義は、国や館種を問わず文化格差を埋めることにあります。中でも公共図書館は情報と文化への無料アクセスを保障することで、社会的・文化的に不利な立場・弱い立場に置かれた人びとを包みこんで、文化的包摂を目指します。そのために図書館資源を調整する理論が求められています。また公共図書館が他者への想像力を育む装置となるための仕掛けを作ることも必要です。こうしたチャレンジングな課題を一緒に考えていきませんか。
興味がわいたら~先生おすすめ本
オランダ公共図書館の挑戦:サービスを有料にするのはなぜか?
吉田右子
オランダでは公共図書館でのサービスが有料です。「いかなる理由があるにせよ、公共図書館サービスへの課金が許されてよいはずがない。無料だからこそ『公共図書館』と呼べるのではないか」と考えていた著者は、オランダへ。そして、司書や図書館職員に、「なぜ、オランダでは図書館サービスが有料なんですか?」と片っ端から聞いて回ったのでした。充実した公共サービスで世界の注目を浴びているオランダで、公共図書館がサービスを有料化している理由とは? 本書でその理由を知り、公共図書館という存在を考えるきっかけにしてもらえればと願っています。 (新評論)
デンマークのにぎやかな公共図書館:平等・共有・セルフヘルプを実現する場所
吉田右子
福祉の世界ではその名が知られるデンマークは図書館サービスにおいて世界でもトップレベルにあります。本書では、著者が実際に訪ね歩いた図書館の中から選んだ個性的な図書館を通して、北欧公共図書館の豊かな世界をご紹介します。「必要な資料を利用者一人ひとりに手渡していく」。この当たり前とも言える図書館の原則を、北欧の公共図書館は淡々と守り続けてきました。なぜなら人は誰しも、一冊の本を通じて自分と社会を変えていく力があるからです。厳しい吹雪の中でもブックモービルを走らせ、フィヨルドの奥地まで図書館船を運航してきたのは、そうした可能性を人びとに示すためです。本書を通して、みなさんも一度は行ったことがある図書館の魅力を<再発見>するヒントを探してみませんか。 (新評論)