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特許の調査にかかる時間と経費を減らす~膨大なデータ処理を人工知能で!


槫松理樹 先生

岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 ソフトウェア情報学科 人工知能コース/ソフトウェア情報学研究科 ソフトウェア情報学専攻

どんなことを研究していますか?

私たちの周りには様々なデータがありますが、その量は膨大でかつ急激に増大しているため、データを効率良く管理し、分析し、活用する方法が重要になってきます。このような作業は、以前は人間が方針を決め分析したわけですが、最近では人工知能研究の一領域である「機械学習」と呼ばれる手法を活用し、複雑で時間がかかることに対処することや、人が見出せなかった知見を得ることなどが取り組まれています。

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私は、人工知能の分野で研究が取り組まれている技術(人工知能技術)を活用し、膨大なデータから特徴を見つけ出し、それを用いて同じ種類の新しいデータを処理するシステムを構築することに取り組んでいます。この研究では特許に関わる処理を支援する研究を行っています。

人工知能を活用し類似特許を調査

例えば新製品を発表したとき、過去に発表されている特許と類似していれば、その製品を販売できなくなる、特許の所有者にお金を払う必要がでてくるというようなことが起こります。それを避けるために、会社などは既存の特許を調査しています。しかし、特許の量は膨大であり、人が行うのは大変です。そこで人工知能技術を活用した類似特許を調査する仕組みを作ることに取り組んでいます。特許はその内容が高度で複雑なため、いかにコンピュータが文章を読み取り判断できるかが鍵になります。この研究が進めば、膨大な特許情報の処理にかかる経費や時間の負荷を軽減することができ、企業活動の活性化につながると考えています。

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研究者仲間とミーティングの様子

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→情報処理・通信
  • ●主な職種は→SE、プログラマ-
  • ●業務の特徴は→システム開発や保守などPCなどの情報機器に向き合う仕事ですが、企画する人、販売する人、利用する人など多くの人とのコミュニケーションも重要です。
分野はどう活かされる?

多くの学生が、SEやプログラマとして働いています。彼らは、PCやスマートフォンなどのアプリケーション開発に従事しています。例えば、スマートフォン用ゲームの開発や、会社などに使われる業務用アプリケーションの開発などです。それらの業務と彼らの卒業研究との内容は必ずしも一致していませんが、大学の授業や研究で学んだプログラミング技術や物事の考え方、プロジェクトの進め方などを活かしていると思います。

先生から、ひとこと

セレンディピティという言葉を聞いたことはありますか。セレンディピティとは、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけることといった意味になります。自分がやりたいことを1つ決めて突き進むのは良いことです。ただ視野が狭くなってしまっては面白くないので、ぜひいろいろなことに興味の目を向けてみてください。

先生の学部・学科はどんなとこ

岩手県立大学ソフトウェア情報学部では、ソフトウェア情報学に関し、多様な角度から研究を行っています。全体として、アプリケーション寄りの研究が多い傾向があります。また地域の特性から、高齢者支援や被災地支援に取り組んでいる研究もあります。さらに、自動車制御ソフトに代表されるような組込みソフトの研究も行われています。

本学部は2019年4月より、「データ・数理科学」「コンピュータ工学」「人工知能」「社会システムデザイン」の4つのコースを設けました。1年次はコースに属さずに共通のコンピュータサイエンスの基礎を学び、2年次にいずれかのコースに属し、さらに3年次からは研究室(各研究室教員1名)のもと、コースにおける専門性を高め、4年次からは卒業研究に取り組みます。コースや研究室は年次進行とともに自らの適性・関心を見極めながら選択することができます。また複数学年混成のグループワークを中心とした授業も実施しています。

先生の研究に挑戦しよう

現在、様々なデータがインターネットを通して入手・利用できるようになっています。具体的には、国勢調査、労働力調査、小売価格調査、天候などのデータがあります。それらのデータを、数学Iで学ぶ「データの分析」の知識を活用して処理してみましょう。例えば、度数分布や箱ひげ図を作成する、平均値や分散を求めてみる、あるいは、データ間の相関を求めてみるといったことです。自分でどのようなデータを用いるか考えてみてもよいですし、すでに報告されている内容を検証してみてもよいと思います。あるいは統計データなどに基づくクイズ番組の問題を確認してみるというのも面白いと思います。その過程を通して、自分にとって新しい発見があれば、研究テーマを体験することにつながります。

興味がわいたら~先生おすすめ本

金鉱を掘り当てる統計学

豊田秀樹

データの中から新しい知識を発見する「データマイニング」を中心に、ニューラルネットワークや決定木学習などについて、例題をもとに解説されています。内容はやや古い点もありますが、現在も使われているものや、現在使われている技術の基礎となっているものがほとんどです。研究でデータを分析するために利用できる手法・技術を理解するきっかけになると思いますし、規模は小さいですがデータも紹介されているので、それらを利用して実際に処理してみればより理解が進むと思います。 (ブルーバックス)


データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

矢野和男

現在盛んに研究がされている「人の行動分析」について述べている本です。ウエアラブルセンサから得た大量なデータを分析し、人間の行動や社会現象を考えています。多くの具体的な事例が載っており、これからの研究を知る参考になると思います。苦労話もでており、研究がどのように進められているかも知ることができると思います。 (草思社)


データでいのちを描く テレビディレクターが自分でAIをつくったわけ

阿部博史

NHKスペシャル「AIに聞いてみた」「震災ビッグデータ」などのディレクターが書いた本です。技術面の話は少ないですが、ビッグデータ解析とAIを活用することでデータから引き出せる可能性について述べています。何ができ、何ができないかについて、平易な文章で書かれており、読みやすいです。ビッグデータ解析とAIについて考えてみる第一歩としてお勧めします。 (NHK出版)


きまぐれ博物誌

星新一

ショート・ショートで有名な星新一氏のエッセイです。書かれた時期こそ古いですが、現在でも通用する話題も多く参考になると思います。一つひとつの話は短いですし、発想の幅を広げるという面からも、軽い気持ちで手に取ってほしい本です。 (角川文庫)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。