日本の大学では、百年前に作られた国民国家の枠組みにしたがって「アメリカ文学」や「日本文学」といった括りで文学を捉えることが多いですが、私はそのような枠組みでは捉えることのできない、「移動する人々」が「多様な言語」を用いて生み出した作品を研究しています。
アメリカには、ロシアから亡命してきたウラジミール・ナボコフやフランスからホロコーストを逃れてやってきたレイモンド・フェダマンといった亡命・難民作家が数多くいます。また、難民化した少数民族が様々な国へと「離散」するという現象に着目し、そうした経験を経た人々や、そうした人々を祖先にもつ作家たちが生み出す作品を研究しています。
「ブラック・ディアスポラ」や「チカーノ・ディアスポラ」の文学
「民族離散」(ディアスポラ)とは、本来パレスチナ以外の国々に離散したユダヤ人の経験を指す言葉ですが、現代では、奴隷としてアフリカから連れ去られた人たちや、19世紀半ばに祖国に居ながらにして難民化した米国のメキシコ人にも応用され、「ブラック・ディアスポラ」や「チカーノ・ディアスポラ」と呼ばれています。
こうした離散を経験した人々を祖先にもつ作家たちが、自分の母語と新しい言語が混じり合った、全くユニークな言語表現を使って生み出した作品の素晴らしさを探求します。そうすることで、従来の国別に括られてきた文学の枠組みでは捉えることのできない、新しい世界文学の捉え方を提示できると考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→商社等の卸売業、金融業、マスコミ等の情報通信業、教育
- ●主な職種は→総合職、事務職、編集、教員
- ●業務の特徴は→頭と体を使うこと
分野はどう活かされる?
英語はただの道具。英語でも日本語でも、しっかりした論理を組み立てて、書いたり話したりすることできることが大事。それはどのような業種に就いたとしても同じです。
大学は、クイズ番組で役に立つような知識を蓄える場所ではありません。知識は体系化されないと意味はありません。それは、まるでバラバラに散らばったジグゾーバズルのピースです。大学は、学生一人ひとりが自分自身の興味や関心事を軸にして、主体性を持って蓄えた知識を体系化する(唯一無二のジグゾーパズルの絵を完成させる)のを促します。体系化された知識は、いわばその人の「哲学」になります。教師である僕は、学生一人ひとりが、頭だけでなく体全体を使って考え、一生涯役立つはずの「哲学」を作りあげていく手助けをしたいと思っています。
大規模の総合大学の特徴である多様な人材(教職員も学生も)や、一つの学部や学科にとどまらない多様な学部学科横断型のカリキュラムを体験できます。その一方で、少人数のゼミが充実しているので、一流の教師から専門科目で、親密な指導を受けられます。
いずれにしても、学生本人の興味や関心のありようで、知識は無限に広がるし、深く掘り下げることができるのです。知識を教養に変える、そんな素晴らしい教育環境を、自分のために活用してほしいと思います。
興味がわいたら~先生おすすめ本
オムニフォン “世界の響き”の詩学
管啓次郎
著者は比較文学者で詩人。カリブ海文学、フランス語圏アフリカ文学、アメリカインディアン文学、異文化コミュニケーション論、トラヴェル・ライティングなどをいろいろな大学で教えてきた。本書のタイトル「オムニフォン」とは、「オムニ=全」、「フォン=響き」のことで、一つの言葉のなかに数多くの言語が響いていることを想像し、感じることを意味する。アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、ブラジル、東アジアなど異なる文化が交じり合うカリブ海の多文化状態の中での文学を語る。世界史を教科書とは全く違った視点で書き直す、挑戦的な試みで、世界の見え方が変わってくるだろう。 (岩波書店)