機械材料・材料力学

薄膜化で、金属、セラミクス、高分子など物質表面に新しい性質を与える


井上尚三 先生

兵庫県立大学 工学部 機械・材料工学科 機械工学コース/工学研究科 機械工学専攻

どんなことを研究していますか?

機械材料・材料力学は、機械を構成する材料の強度について研究する分野です。その中で私自身は、ハード(硬質)コーティングを研究してきました。例えばドリルなどの金属部分にハードコーティングを施すと、耐久性を高めることができます。

ハードコーティングの技術の1つにスパッタリング法という技術があります。それは、高いエネルギーを持ったイオン粒子を物質の表面にぶつけると、表面の原子はじき出され基板の上に薄膜を形成するというコーティング技術です。めっきのように薬液を使わないコーティングです。これを用いると、金属、セラミクス、高分子など多岐にわたる物質を薄膜化することができ、物質表面に新しい性質を与えることができます。私たちの研究室でも、スパッタリング法を使って主として窒化チタンや窒化ホウ素などのハードコーティングを形成する研究を行なっています。

自由に操作できる形状記憶合金薄膜を作る

形状記憶合金は、ある温度以下で変形しても、その温度以上に加熱すると、元の形状に回復する性質を持った合金です。その形状記憶合金についても薄膜化を進めてきており、すでに形状記憶挙動を示す薄膜の作製に成功しています。その一つが、能動性カテーテルの製作です。血管内の治療に用いられる医療用のカテーテルの先端部に、「熱を加えると、その方向に屈伸する」という性質の形状記憶合金の薄膜をつけておくと、先端が自由に曲がり操作できるようになります。

こうした技術を、ミクロな世界で自由自在に駆動するマイクロマシンに応用できるようなマイクロ材料の開発研究にも取り組んでいます。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→製造業(電機・機械・自動車)
  • ●主な職種は→開発、生産技術等
  • ●業務の特徴は→新製品開発や製造コスト削減など
分野はどう活かされる?

直接関わりがある業務についている例では、切削工具の耐久性を高める耐摩耗性コーティングの開発をしている卒業生がいます。この卒業生は、私の研究室でも同様の研究をしていましたので、学生時代の知識を直接活かせていると思います。

先生の学部・学科はどんなとこ

兵庫県立大学工学部には、マイクロ材料やマイクロ加工の研究に携わっている教員がたくさんいます。また、国内の大学としては数少ない放射光施設を有しており、この分野での最先端の研究に触れることができます。

興味がわいたら~先生おすすめ本

ミクロの決死圏

1966年に公開されたアメリカ映画。外科手術が不可能な患者を救うために医師と潜水艇がミクロ化され、体内に送り込まれるSF冒険物語。50年以上前に制作された映画にも関わらず、レーザー治療など、現代の技術を予感させる描写も多い。マイクロマシンに対する期待も当時からあったことが感じられる。


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ