私たちの体の調節は、神経系と内分泌系によって成り立っています。私は、後者の内分泌現象である、脳ホルモンによる性行動や生殖腺の発達に関する研究や、浸透圧調節など水や電解質代謝調節に関する研究を行ってきました。私たちの体はどのように男性と女性の体になるのか、思春期はどのようなメカニズムで生じるのか、のどが渇いた時にはどのような仕組みで水を飲むようになるのかといった、体の調節方法を、脳の中の視床下部という領域で作られる脳ホルモンに着目して教育・研究を進めてきました。
食欲に関係する脳内伝達物質を発見!
私たちは最近、脳の視床下部領域から新しい伝達物質を探した結果、過去に見つかっていない物質を発見することに成功しました。その作用を解析すると、食欲やエネルギー代謝調節に関与していることがわかってきました。現在、ラットやマウス、ニワトリを用いて機能解析を進めています。現代社会では、運動不足やストレスなどから食べ過ぎたり肥満になったりします。食欲や脂肪蓄積の分子機構の解明を行うことで、肥満や糖尿病などの病気の防止や改善に役立てる可能性があると思い、基礎研究を行っています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→製薬企業、食品企業
- ●主な職種は→研究職
- ●業務の特徴は→生命科学に関係したもの
分野はどう活かされる?
食欲やエネルギー代謝調節の研究経験を活かし、消費者の食嗜好性や健康問題に興味を持って卒業していきます。そのため、それらに関連した製薬や食品企業に就職しています。研究室の研究を100%一致させて働くことは不可能ですので、研究室で学んだ多くのこと(ものごとを深く考え、実践していくこと)を踏み台として社会人としてがんばってほしいと思います。
高校生までの経験では、自分の興味、能力、将来の職業などを判断し決めることは難しいと思います。やりたいことが沢山ある、というのも正解です。総合科学部は様々な分野の先生や学生が多角的な視野で教育・研究を行っています。予測不能の世の中を生き抜くためにも、「総合科学」を学ぶ価値が必ずあると思います。
総合科学部は文理融合・学際研究を目指したユニークな学部です。高校までの文系・理系の枠組みにとらわれず、世の中の仕組みを理解し、問題を発見することを目指しています。その中で生命科学は、我々ヒトの健康問題を分子レベルから個体レベルまで理解するために必要な学問分野です。
興味がわいたら~先生おすすめ本
生命をあやつるホルモン 動物の形や行動を決める微量物質
日本比較内分泌学会::編
私たちの体の中には微量にしか存在しないにも関わらず、生体調節に重要なホルモンがたくさんある。これらが働くことにより、環境に適応したり、次世代を作ったりしていくことができることが、様々な動物を用いてホルモンの働きがわかってきた。それらについて最先端の研究者がわかりやすく説明している。比較内分泌学という学問分野が扱ってきた、様々な動物におけるホルモンの構造やその働きがわかる。 (ブルーバックス)