中国・宋の時代(960〜1279)には木版印刷が普及しました。木版印刷とは、木の板(木版)に、版画のように文字を彫ってそれを紙に写す方法です。それ以前は手書きの写し書き、つまり書写して伝えるしか方法がありませんでした。当時は現在のコピー機のようなものはないので、書写だけでは数部多くても数十部の出版しかできませんでした。ところが、木版印刷の登場によって、同時に多くの印刷を可能にしました。多く出版された関係で、千年以上前に印刷された宋代の書籍が今日に伝わっていることもあります。
ちなみに、西欧の書籍は古くてもせいぜい五百年前くらい前のものしか伝わっておらず、いかに中国の歴史が古いかということがわかります。
私が研究している文人・欧陽脩(1007-1072)の宋代に出版された全集は日本に伝わっており、今から千年近く前の古くて貴重な書物なので国宝に指定されています。欧陽脩は中国の中学校や高校の教科書に作品が掲載されている有名人です。
これまで知られていなかった欧陽脩の書簡96篇を日本で発見
私は研究をしていく中で、これまで存在すら知られていなかった欧陽脩の書簡96篇を日本で発見しました。これは、例えて言うなら『源氏物語』の新しい物語が発見されたようなものです。
千年もの間、陽の目を見ることのなかった書簡の発見は、中国の文学史を書き換える出来事であり、中国のメディアでも大きく取り上げられ、中国で講演する機会にも恵まれました。まだ誰も見たことのないものを見られるかもしれないという興奮は、最先端の研究の醍醐味です。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→情報通信、教育・学習支援、サービス業
- ●主な職種は→教員、公務員、通訳関係
- ●業務の特徴は→中国文学の研究では中国語や漢文訓読、中国の知識、古典の素養等を学びます。それらを生かした職業があげられます。
分野はどう活かされる?
大学関連としては中国文学や中国語を教える教員。高校や中学では漢文が得意な国語の教員。また、中国語を利用したサービス業、通訳や中国からの観光客への対応等。例えば福岡にある大型商業施設である「キャナルシティ」は、中国からの観光客が多数訪れるので、それに対応する業務をしている卒業生もいます。もちろん、一般の企業に勤め、中国事業に配属されて活躍したり、公務員になる卒業生もいます。
中国の文学史における偉人・欧陽脩の未発見書簡96篇を発見した後、私は所属している九州大学大学院地球社会統合科学府のゼミでそれを読解していきました。中国文学の本場である中国の北京大学、台湾を代表する台湾大学、あるいは米国のハーバード大学やイギリスのケンブリッジ大学等でも全く知られていない資料を使用した授業、つまり最先端の授業を九州大学で行っていたことになります。
これまで全く知られていなかった資料を世界で初めて読み込むことから、わくわく感を懐きました。何と言っても「世界で初めて」は感動します。これぞ学問の醍醐味!研究は楽しいと感じた瞬間です。
中国文学は研究範囲が広く、紀元前に書かれた『論語』等の書物から、英雄・傑物が活躍する三国時代、日本から遣唐使が派遣され、その文化を学んだ唐代、日宋貿易で有名な宋代や、現代のノーベル賞作家・莫言の小説等まで、様々な時代における自分の好きなテーマを自由に決めて学ぶことができるのが特色です。