みなさんは映画や本で「タイタニック号」の名前を聞いたことがあるでしょうか。タイタニック号は、1912年に航海中に氷山にぶつかり、北大西洋で沈没してしまった豪華客船です。多くの命が失われたこの事故は、20世紀でもっとも象徴的な海難事故の一つとして知られています。
この事故には、実は「材料の科学」が深く関わっていました。船は「鋼」でつくられていますが、その鋼が「寒さ」にとても弱かったのです。今では、鉄にさまざまな元素を加えたり、内部の構造をうまくコントロールしたりして、寒い場所でも壊れにくい材料がつくられていますが、当時はそうした知見が十分に活用されていませんでした。
なぜ金属材料は寒い場所で壊れやすくなるのか
私は「結晶塑性学」という分野で研究しています。今取り組んでいる研究の一つに、なぜ金属材料が寒い場所で壊れやすくなるのかという問題があります。その理由を明らかにするカギは、材料の中の原子がどのように動くかにあります。私は、極低温で材料を壊す実験や、電子顕微鏡を使って原子の動きを観察することで、そのメカニズムを明らかにしようとしています。
飛行機や橋、自動車、スマートフォン――こうした製品に使われている材料が「どんな条件で壊れるのか」を知ることは、とても大切です。その限界をきちんと理解することで、新しい材料を開発することもでき、より安全で安心な社会づくりに役立てることができます。
「材料の中で原子がどう動くか」を調べるという、とても小さな世界の研究が、実は私たちの生活を支えているのです。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→金属・鉄鋼・重工・半導体・自動車
- ●主な職種は→研究職・技術職
- ●業務の特徴は→材料開発研究
分野はどう活かされる?
素材メーカーでの新材料・技術の開発
我々は、変形や破壊について研究をしています。材料の限界を知る事によって、その良さを最大限に活かすことできます。物事の本質に迫る「なぜ?」という問いが好きな皆さん、ぜひ一緒に研究を進めていきましょう。
材料工学科では、物理・化学を基盤にして材料に関する研究を行っています。物理・化学を「ものづくり」にどう活かすのか、学びたい高校生にお勧めです。

