触覚を活用した衣服やインソールで、転倒予防やより良い歩き方に
力加減は指からの触覚情報で
私たちの生活の様々な場面で触覚は重要な役割を果たしています。例えば、物を掴んで持ち上げる時、力が強すぎると物が壊れますが、表面が滑りやすければ、物が壊れない程度の強めの力が必要となります。この力の調整は物と接触する指からの触覚情報が重要であり、指先が冷えて感覚が低下すると、物が掴みにくくなることは想像できるかと思います。
足元への意識が高まる鳶職人の服
私たちの周りには触覚を活用した道具が多く存在します。例えば、鳶職人が着る裾の広がった服は、広がった部分が足の動きによりヒラヒラと動いたり、周りにある物と接触したりすることで、足元への意識が高まるとされています。このような効果を応用し、衣類の形状によっては身体部位の位置や動きが分かりやすくなり、高齢者の転倒予防やスポーツパフォーマンスの向上に繋がるのではないかと研究を進めています。
また、私たちが立っていられるのは、足底(足裏)の触覚で体重のかかり方を把握することが重要な一因です。そのため、インソールの形状を工夫し、足底からの触覚感覚を変化させることで、より良い歩き方に導こうとする研究も進めています。
VRやARにも触覚が活用される
最近は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などで物に触れたときの触覚を再現する、いわゆる“触覚グローブ”などの開発も進んでいます。映画では立体映像の3Dから体感型の4Dへの発展が注目され、映像に触覚刺激を加えた4D映画の開発も進んでいます。このように、触覚活用に関する研究は今後もより発展していくと期待されます。
触覚の活用に関して「これがきっかけ!」と言うものはないのですが、私はずっと水泳(競泳、フィンスイミング)をやってました。水泳をやっている人は分かると思うのですが、水を掻く際に“水を掴む感覚”などと表現します。また、泳いでるときには身体を“水が流れる感覚”を得ることも重要です。そう考えると、水泳は他のスポーツよりも触覚を意識しており、また全身の触覚も使うことから、触覚に対する親和性は高かったのかもしれません。
「衣類の着用による触覚情報を利用した日常生活動作向上に繋がる方策について」
「応用人類学」が 学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)
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「7.生物・バイオ」の「25.自然人類学」
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「11.バイオ工学」の「41.健康・福祉工学、介護ロボット等」
「人間情報工学科」と言うのは少し珍しい名前ではないでしょうか。ここでは、「人間中心の設計思想」の理念に基づき、使用する人の特性やニーズに沿った「もの」や「サービス」を設計できる人材の育成を目指しています。
学びの特徴として、プログラミングなどの情報工学に関する授業に加え、人(ヒト)に関する授業が開講されています。講義授業では、ヒトの特性(生理学や解剖学など)を学ぶ「人体の構造と機能」や、その特性が気温、昼夜、加齢などでどう変化するかを学ぶ「環境生理学」、実験授業では、身体機能や動作・行動を数値化する方法を身につける「人間情報工学実験」などがあります。
私は「生体情報計測研究室」を担当しています。今回紹介した触覚に関する研究に限らず、人の行動に伴う様々な生体情報を計測し、それに基づいて生活をより良くする方法や健康増進に繋がる方策を検討しています。
・日常で触覚が活用されたものを探してみよう。
スマートフォンのバイブレーション、シャンプーボトルの横刻み、点字ブロックなど、触覚を利用した道具はたくさんあります。
・体の部位によって触覚の感じ方が違う?
先の尖った2本の細い棒を用意します(2本の間隔が3~4 mmのもの)。目を閉じた状態で、誰かに2本同時に体に押し当ててもらい、2本だと分かるか感じてみてください。例えば、人差し指の腹の部分に押し当ててもらうと、2本が当たっていると認識できると思います(写真)。他の部位ではどうでしょうか?2本かどうか分かりにくい部位もあります。触覚の感じ方は体の部位によって異なります。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 興味のあることはたくさんあるのですが、現在の専門に関するもの以外であれば、「海洋科学(生物学、工学)」、「近・現代史」や「神道」です。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 温暖な気候と海が好きなので、地中海周辺の国(でも、日本以外で暮らそうと思ったことはありません)。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 高校までは水泳で、大学に入ってからはフィンスイミングと言う、足ヒレを付けて泳ぎ速さを競う競技をしてました(部活ではなく、地域のチームで)。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? スクーバダイビング(海が好きです)。 |