人体を切開することなく内部を透視することは、正しい医療診断の基本です。現在、人体透視にはX線透視、生体の持つ磁力を利用したMRI(核磁気共鳴装置)、超音波診断装置などが利用されていますが、どれも一長一短があるのが現状です。
X線は人体に害を与える放射線ですし、MRIは大がかりな装置でペースメーカーなど体に強磁性金属が入っている場合使えません。超音波エコー装置は、体内細部の鮮明な画像化が難しく、患者の条件によって精度が変わるという短所があります。
これに対しこの研究では、光による生体透視の実現に挑戦しています。具体的には、可視光と赤外光の波長領域間に位置する近赤外光を使い、人体内部の構造を3次元画像化する手法の開発です。
人体への悪影響がなく、乳幼児や妊婦でも使用可能
近赤外光は生体物質における減衰が比較的少なく、透過する性質を持っています。大きなメリットとして、X線などと違って、人体に照射されてもほとんど悪影響はありません。問題は、生体組織に照射した光が強い散乱を受け、透過画像が大きくぼけたものとなることでした。これに対し、光散乱を抑制する種々の方法を開発しました。
それによって、患者のベッドサイドで手軽に利用できる簡易な装置で、生体透視が行えるようになりました。乳幼児や妊婦でも、安心して何度でも透視することができますし、長時間にわたる体内状態の可視化も可能となります。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→電気・情報系
- ●主な職種は→工学技術者、公的および民間企業の研究開発
- ●業務の特徴は→各会社の中で人間や医療に関する職場が多い
分野はどう活かされる?
医療や人体、とくにユーザインタフェースにかかわる研究開発、知財関係などで、学んだことが活かされています。
人体や医療に関わる研究は、その成果が直接人々の幸福につながる素晴らしい領域の一つです。工学や光学などとの境界領域は、まだまだ新技術が生まれ続けている宝庫でもあります。
早稲田大学は、文科系、理科系共に教育や研究の充実した伝統的な総合大学です。とくにその特性を生かし、新たな境界領域の開拓、世界レベル化を推進しています。