レディ・ジョーカー

髙村薫

高校生のころは、自分の関心事といえば、学校のこと・家族のこと・友達との関係・今日のテレビ番組・明日の時間割など、自分を中心とした半径5メートルぐらいの範囲ではないだろうか。それは当然のことで、人は成長するにつれて活動する範囲を拡げながら、やがて自分が直接体験できない遠い場所を考えるようになり、この社会の広さや複雑さや困難を知ることになる。この小説は、巨大ビール会社の社長誘拐の陰に隠れた日本社会の闇を描いたものだが、髙村薫の小説はどれも、現代の日本の救いようのない現実を教えてくれる。自分から遠く離れた場所への想像力を培い、そしてまずはこの世界に絶望してほしい。 (新潮文庫)

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