美術史

宗教改革が美術に与えた影響は~美術と社会の相関関係


宮下規久朗 先生

神戸大学 文学部 人文学科 美術史学専修/人文学研究科 社会動態専攻

どんなことを研究していますか?

16世紀のヨーロッパでは、宗教改革が起こり、それまでのカトリック教会の腐敗や堕落を非難し、宗教美術を否定します。カトリック側はそれに対抗してカトリック改革という大規模な改革を行い、美術を積極的に振興します。当時の絵画はほとんどが宗教画であり、教会や聖職者の要望で描かれるものでした。

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そこで私は、革新的なイタリアの画家カラヴァッジョを中心に、この時代のバロック期の絵画が聖職者や民衆にどう受け入れられ、どのように宗教美術を変化させ、人々の美術に対する考えが変化したかを研究しています。近代社会になっても、宗教的な感情は形を変えて美術に流れ込んでいますが、そういった観点から幅広く近現代美術についても研究しています。

また、カトリックの美術への影響はヨーロッパだけでなく、イエズス会によってカトリックがもたらされた日本や中国にも伝播されています。そこで、マカオのキリスト教美術や日本の南蛮美術の研究も行なっています。

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金沢にて。研究室旅行

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→美術館・博物館などの教育・学習支援業
  • ●主な職種は→学芸員、研究員
  • ●業務の特徴は→美術館・博物館での企画・運営・研究
分野はどう活かされる?

美術館・博物館の学芸員として、自分の専門とする分野において論文を書き、展覧会や展示という形で世に問うことができるだけでなく、専門外の分野も担当して自分の知見と経験を拡大することができます。

先生から、ひとこと

美術史という学問は、高校までは存在しません。実技の「美術」とはまったく異なり、歴史的に美術作品を読み解く人文学のひとつです。大学の文学部で出会うことのできるもっとも面白い学問だと言われています。

先生の学部・学科はどんなとこ

神戸大学文学部は一学年の学生が100人、教員は約50人で、学生と教員との距離が近く、小じんまりとしたアットホームな雰囲気で、一人一人の学生が大切に育てられています。

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大分県臼杵にて。研究室旅行

先生の研究に挑戦しよう

・日本史や世界史の文化史のコーナーに出てくる作品や美術家について、図書館やネットで深く調べ、鮮明な画集で見てみる。
・美術館に行き、興味を持った作品や美術家について、図書館やネットで調べてみる。
・図書館などで美術史の本を読んでみる。

興味がわいたら~先生おすすめ本

モチーフで読む美術史

宮下規久朗

美術というものは感性や好き嫌いで見るような趣味的なものではなく、文学と同じように、意味を伝達するものとして、文化や社会で尊重されてきました。特に西洋の美術は、古来様々な約束事があり、それを知った上で見ると美術の奥深さを楽しむことができます。本書は、美術作品によく出てくる代表的な動植物や道具、食べ物など(モチーフ)を取り上げ、古今東西の代表的な美術作品を通して、美術を読み解く楽しさを伝えます。本書で語られる美術へのアプローチや考え方は、そのまま美術史という学問への入口になっており、この学問の魅力を知ることができるでしょう。 (ちくま文庫)


しぐさで読む美術史

宮下規久朗

美術の中心であった人間像のうち、しぐさやポーズから美術作品を読み解きます。美術作品には、様々な意味が込められており、人物のしぐさ1つにも意味があります。しぐさがどのような感情を表すかを知った上で絵画を見ると、画家が表現する「物語」が浮かび上がります。走る、踊る、殴る、食べるなど、しぐさごとに絵画の意味が解説されています。 (ちくま文庫)


食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む

宮下規久朗

「人は臨終になったら、いったい何が食べたいと思うだろうか」。著者は読者に問いかけます。美術と食は深いつながりがあります。中世にキリスト教によって食事に神聖な意味が与えられると、食べ物や食事は西洋美術の中心的なテーマとなりました。本書は西洋の食や食材にまつわる作品を通して、食と美術の関係を解き明かします。 (光文社新書)


一枚の絵で学ぶ美術史 カラヴァッジョ《聖マタイの召命》

宮下規久朗

カラヴァッジョのデビュー作《聖マタイの召命》は、美術史を変えた名作だが、主人公のマタイがどこにいるかでいまだに意見の分かれる問題作。その問題を考えつつ、一枚の絵をじっくり見て読み込む面白さから、美術史という学問の奥深さや豊かさを、高校生向きにわかりやすく説明しました。 (ちくまプリマー新書)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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