音楽を奏でたり鑑賞したりすることは、人間の身体や精神にどのような作用をもたらすのでしょうか。その内的メカニズムを明らかにすることで、よりよい音楽の指導方法を検討したり、音楽を学習することの意義を明らかにしたりする音楽教育学を専門としています。
(撮影:須古恵)
これまで、音楽をイメージする能力、つまり心の中で音楽を鳴らす能力が、どのように獲得されるのかを、レッスンや子どもの観察を通して探ってきました。そして、音楽との一体感を味わいながら全身で動く経験が、音楽の感じ方を豊かにしたり理解の深まりを促したりするだけでなく、この音楽的なイメージの形成に影響を及ぼしていることがわかりました。
また、音楽家の教育方法からも学ぶために、戦後のピアニスト園田高弘さんとその父、園田清秀さんの教育法に注目し、古い時代の楽譜や本を分析したり、お弟子さんに話を聞いたりして、彼らの音楽観や教育観を明らかにしました。また、彼らの所蔵楽譜や写真、手紙などをデータベース化し、貴重な歴史資料として後世に残すことができました。
現在は、ピアニストやピアニストを目指す若い人たちが、手や指の使い過ぎによって故障をきたすことのないよう、体の使い方や学習方法、指導方法の開発に取り組んでいます。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→教育関係
- ●主な職種は→教員、音楽の教員養成、保育者養成、ピアノ指導者など
分野はどう活かされる?
学部までに身につけた実技の能力と、大学院で習得した研究の能力を融合させて、音楽教育の諸問題に取り組んでいます。
音楽と出合い、音楽を学ぶという機会は、日常生活の中にあふれています。音楽教育やその学習を特別なことと捉えるのではなく、身近な事柄の中に、その芽を探してみてはいかがでしょうか。
東京藝術大学では、芸術を愛する学生たちが、その技能や理論を身につけるために、日々努力しています。私が所属する音楽教育研究室は、大学院の独立講座なので、学部までに身につけた知識や技能に磨きをかけつつ、さまざまな環境で営まれる音楽教育や音楽学習について研究を深めています。

