病院で注射されるのはだれにとってもあまり気持ちのいいものではありません。これに対して針を必要としない注射器が注目を浴びています。この注射器の開発を行うのが、流体工学です。流体工学とは、水や空気の流れを制御して、工学的な利用を目指すものです。この分野では、身近な現象から目に見えないほど小さな流れまで、例えば雲の流れ、原子・分子の流れ、体内の血流、注射器からの流れなどを研究対象にします。
秒速約340メートル以上という超音速で薬剤を射出
流体工学の分野の中で、私はとくに、流体の医工学への応用をテーマに研究をしています。秒速約340メートル以上という超音速で、高い粘度を持つ薬剤をジェット射出するという、液体マイクロジェット装置を開発し、無針注射器の実現性を実証しました。
この無針注射器が開発されれば、針に対する恐怖心、看護師などによる医療事故、針を介した感染の拡大などを解消することになるでしょう。毎日患者自身が注射を打つ必要のある糖尿病の患者さんなどの負担を劇的に軽減することができます。
この装置は医療用だけでなく、例えば今より性能にすぐれたインクジェットプリンタにも利用ができます。高粘度の液体のジェットで、発色の向上やインクのにじみ低減に期待できそうです。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→製造業
- ●主な職種は→研究職
- ●業務の特徴は→研究成果を新しい機械の開発に活かす点
分野はどう活かされる?
医療機器の開発、農業機械の開発
研究の醍醐味は、何かを明らかにできたときに「なるほど!」「そうなっていたのか!」と知的な興奮・感動を味わえることです。多くのことに興味を持ち、失敗を恐れずチャレンジしてください!
興味がわいたら~先生おすすめ本
動画「Steady levitating droplets」
身近な流体の不思議な現象の一つである「液滴浮遊」について、わかりやすいアニメーションと高速度撮影画像により紹介している映像。約2分という短い時間ながら、ポイントを絞った映像が見られる。
(東京農工大学 田川義之研究室)