植物は様々な化合物を創る能力を持っています。例えば、植物に含まれている化合物群に、フェノール性化合物があります。一般には、ポリフェノールとしてよく知られている化合物群で、植物の色素や苦味などの成分です。この中には、抗酸化作用など、ヒトの健康維持や増進に効果のある生理作用を持つ有用物質も多く含まれています。
こうした植物の代謝という自然の営みを深く知るための研究が代謝研究です。代謝研究では、植物がいつ、どこで、どのように化合物を創るのかを、遺伝子、蛋白質、化合物という全ての階層で詳しく調べます。植物が化合物を創る仕組みを理解することで、その能力をうまく引き出すことができると考えています。
紫外線によって植物の有用物質を増産する
私たちは特定の波長の紫外線を照射できる LED 光源を用い、モデル植物のシロイヌナズナ中のフェノール性化合物や遺伝子の発現を網羅的に調べ、植物の紫外線に対する応答について新しい発見をしました。つまり、ある特定の波長の紫外線を照射した時だけ増産されるフェノール性化合物を見出しました。
この現象は、シロイヌナズナだけではなく、お茶やダイズ、すだち、ブドウなどでも確認できたので、紫外線照射という簡単な処理だけで、植物の化合物を創る能力を引き出すことに成功したと言えます。
今は、この現象の仕組みを解明し、植物により効果的に化合物を創ってもらえるような技術を開発しています。ゆくゆくは、植物の生産する有用物質を安価に提供したり、機能性の高い食品を供給したいと考えています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→化学、医薬、食品、化粧品など
- ●主な職種は→研究・開発
- ●業務の特徴は→化合物の取扱い技術や分析技術を活用した業務
分野はどう活かされる?
化粧品メーカーで、高機能性成分を含む植物の探索や活用に関する研究に従事している卒業生がいます。
何にでも興味を持ってその仕組みを自分の頭で考えてみる、考えてみたことをどうやったら証明できるか工夫して実験してみる、わかったことを人に説明してみる、そして、他の人の考えも聞いてみる、その意見も踏まえて考え直してみる。こうしたサイクルが科学では大事です。
大阪の国公立大学では唯一農学系の研究科があります。農学系と言っても幅広く、栽培からバイオテクノロジーまで学ぶことができ、また微生物から植物、あるいは食品まで研究の対象も様々です。