未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために
ドミニク・チェン
言葉を失う現実がある。ひと気のない街角、戦場と化した病院、一喜一憂する感染者数のニュース、営業自粛と三密回避の要請、そして否応もないネット依存、自己と他者との関係性が大きく揺らぎ、「わかりあえなさ」は底知れず深い。
認知科学を研究する著者は、本書(2018年に連載してきたエッセイを2020年1月に書籍化)の中で、新型コロナ・ウィルスが席捲する今の現実を予測していたわけではない。しかし、関係性の「分裂生成」、「わかりあえなさ」の増大を前にして、新しい「言語(インターフェース)」をつなぐことによって、人間の新たな意味と価値をどのように見出したら良いか、身近な体験に基づきながら思考している。
新しいインターフェースが社会を動かす力となることに敏感な作家、クリエーター、数学者、建築家など、多くの表現者が絶賛する本。「わかりあえなさ」の時代における新しい「哲学」について、深く考えるための貴重な「入口」となるだろう。
(新潮社)