植物分子・生理科学

どうして植物は厳しい冬を越すことができるのか~光合成と葉緑素の研究


田中亮一 先生

北海道大学 生命科学院 生命科学専攻/低温科学研究所

どんなことを研究していますか?

秋になると紅葉するのはどうしてでしょうか。植物の葉は太陽の光で光合成を起こします。そのとき重要な役割を果たすのは、緑色の色素を持つ葉緑素です。秋になり日差しが弱まると光合成をしなくなり、葉緑素の緑色素が分解されます。その過程で活性酸素を作り、植物の組織を破壊します。これを阻止するために赤色色素を出すので、紅葉するのです。光合成で得られるエネルギーのほうが葉を維持するエネルギーより小さくなると、やがて落葉します。

寒冷地の低温下で植物はどのように光合成するのか

私は光合成と葉緑素(クロロフィル)を研究しています。光合成研究の中でも特に取り組んでいるのは、植物が冬の間に厳しい環境でどうやって光合成をしているか、さらに言えば、寒冷地の低温下で植物はどのように生き延びているかといった疑問につながる研究です。植物は落葉前に、葉を作っている有機物の中で養分として再利用できるものを回収します。その養分は次の春、葉を出すのに使われます。光合成のしくみをよく理解することによって、植物が越冬することに関して理解が深まると期待されます。

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樹木の光合成の様子をクロロフィル蛍光測定によって分析しているところ。この測定のあと、実験室でタンパク質の機能を解析します。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→化学、食品、教育
  • ●主な職種は→研究、教育、システムエンジニア、営業
分野はどう活かされる?

植物や藻類を扱う研究などの仕事では、学んだ分野が活かされています。

先生の学部・学科はどんなとこ

北海道という特色を生かして、寒冷環境での光合成について研究しています。大きな大学なので研究設備等が充実しているのが強みです。また、いろいろな研究者がいるので様々な分野で協力して研究がしやすいです。

先生の研究に挑戦しよう

気温、光の強さなど、どんな条件で植物がダメージを受けやすいか、それらのダメージが、例えば紅葉、発芽、種子形成など植物のライフサイクルにどう影響しているか、調べてみましょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

光合成とはなにか 生命システムを支える力

園池公毅

光合成とは、二酸化炭素を取り入れ、光のエネルギーを用いて有機物を生成する過程のことで、植物だけが持つ優れた働きのこと。動物はこの生命システムを支えるエネルギーを自分では作れないわけだから、地球上の生命体はみな植物の光合成の恩恵をうけているといえる。光合成研究の面白さがわかる本。 (ブルーバックス)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。