植物分子・生理科学

光合成に重要な働きをする、タンパク質の機能を明らかにする


本橋健 先生

京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科/生命科学研究科 生命科学専攻

どんなことを研究していますか?

植物の大きな特徴の一つに光合成があります。植物は、動物と異なり太陽エネルギーを利用した光合成の力で、光エネルギーを利用して二酸化炭素と水から、糖やデンプンなどの有用な有機物を生成しています。光合成は、植物細胞内の細胞小器官の一つである葉緑体内で行われています。私たちは、植物の葉緑体で光合成に重要な働きをするタンパク質に注目し、その機能の研究を進めています。

植物の生育に重要な役割を果たす葉緑体チオレドキシンタンパク質を解析

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光合成はわかりやすく言うと、太陽の出ている昼間だけ、葉緑体の光合成関連タンパク質にスイッチが入ります。それによって植物は外から取り込んだ二酸化炭素を還元して有機物を作り出します。このスイッチの役割は、チオレドキシンと呼ばれるタンパク質が担っています。しかしそのメカニズムの研究は、主に試験管内で行われた実験結果を元にしたものでした。

私は実際の植物体内で、このスイッチ役のタンパク質の解析を行いました。その結果、このタンパク質の蓄積量が減少するに従って植物の成長が阻害されることを明らかにしました。葉緑体チオレドキシンタンパク質は、光合成のスイッチを入れることで、植物の生育に重要な役割を果たしていると考えられます。

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光合成測定機器と実験用の植物(アイスプラント)

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→製造業、製薬会社など
  • ●主な職種は→研究員、技術営業など
分野はどう活かされる?

研究室で学ぶことは、先端の植物科学についてはもちろんですが、研究の進め方、実験結果の解釈の方法を学ぶことにより、様々な分野で活躍する力が身につきます。卒業生はここで身につけた能力で、製造業の研究員や技術営業職として活躍しています。

先生から、ひとこと

植物科学に限らず、最先端の科学(サイエンス)には楽しいことがたくさんあります。そこにたどり着けるよう、皆さんも今のうちから頑張ってください。そして、大学で楽しく研究しましょう。

先生の学部・学科はどんなとこ

京都産業大学生命科学部では、植物の光合成をはじめ、葉の形ができあがるしくみ、マメ科植物とバクテリアとの共生メカニズムなどの植物に関する基礎的な研究テーマから、遺伝子組換え植物や、作物の育種に関する研究まで幅広く行われています。教育面でも、植物科学に関連する基礎的な講義が充実しています。また、植物科学分野に加え、タンパク質の構造生物学、昆虫の生態学など、分子から生態の分野まで、幅広い領域の教育・研究を行っています。

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植物の光合成活性測定を行っているところ

先生の研究に挑戦しよう

植物は、光合成以外にも光を利用しています。アルファルファなどの種子を蒔き、暗所(真っ暗にしておく)と明所で1週間程度生育させてください。生育環境でどのような違いが生じるでしょうか。また、暗所で生育させた種子を、その後1週間明所で育てるどのような変化があるでしょう?その逆は?観察結果をまとめ、考察してみると楽しいと思います。

興味がわいたら~先生おすすめ本

光合成とはなにか 生命システムを支える力

園池公毅

光合成とは、二酸化炭素を取り入れ、光のエネルギーを用いて有機物を生成する過程のことで、植物だけが持つ優れた働きのこと。動物はこの生命システムを支えるエネルギーを自分では作れないため、地球上の生命体はみな植物の光合成の恩恵をうけているといえる。光合成というと、中学校、高校で習ってきたのに、まだわからないことがあるのかと思うだろう。そんな疑問を持つ人に、この植物生理学の分野の研究者が何を面白いと考えて研究しているかを、平易な文章でわかりやすく紹介している。 (ブルーバックス)


これでナットク! 植物の謎 植木屋さんも知らないたくましいその生き方

日本植物生理学会:編

植物って解明されていない現象がまだたくさんある。大きな特徴である光合成以外にも、花が咲く仕組み、葉がさまざまな形態になる仕組み、動くことのできない植物がその環境に適応する仕組みなどなど。これらの植物の生理機能を研究するのが「植物生理学」という学問だ。この本は日本植物生理学会ホームページに寄せられた植物の謎への解説をまとめあげたもの。『これでナットク!植物の謎 Part2』と併せて読もう。 (ブルーバックス)


植物生理学会HP

日本植物生理学会のホームページ。この学会は、植物と微生物を対象とした生化学、分子生物学、細胞生物学、遺伝学などの関連分野の研究者が参加。“植物の機能に関する科学” の総合学会として発展してきた。会員外の一般の人への情報提供の場として 「みんなのひろば」 を設け、会員の研究紹介や植物への質問を受け付けている。ブルーバックス『これでナットク! 植物の謎』は、このコーナーから生まれた。それ以外にも、植物科学のすそ野を広げるためのイベント、中高生への授業なども支援している。


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。