設計工学・機械機能要素・トライボロジー

摩擦を減らせば地球規模の省エネができる!~宇宙でも使えるトライボロジー研究


藤井正浩 先生

岡山大学 工学部 工学科 機械システム系/自然科学研究科 産業創成工学専攻

どんなことを研究していますか?

どんなに複雑な機械装置でも、歯車、ボルト・ナットのねじ類、軸受(ベアリング)など、機械要素と呼ばれる部品を組み合わせて構成されています。これらの部品が組み合わさった機械装置が動くとき、その表面では動きに抵抗する摩擦力や接触による摩耗を生じます。摩擦力を極限にまで下げたり、摩耗を極限まで減少させたりすることで、力をきわめて効率よく伝えることができれば、使用するエネルギーと排出する二酸化炭素を同時に大幅に削減できます。この摩擦や摩耗について調べる学問・技術を、トライボロジーと言います。

宇宙での摩擦と摩耗を小さくするトライボロジー技術

image

私は、ダイヤモンドライクカーボンという炭素系の硬質皮膜やカーボンナノチューブというナノレベルのカーボン材料を機械要素の性能向上に利用するトライボロジー研究や、極限環境でのトライボロジー研究を行っています。

例えば、宇宙で使用される機械要素や、新しい宇宙用潤滑油として期待される潤滑油の研究があります。宇宙では、真空や高温、極低温といった厳しい環境にあるため、材料や潤滑剤に特別なものを使用しなければなりません。ある種の有機化合物を用いたイオン液体は、化学的、熱的に非常に安定で、適度な粘性を持ち、摩擦力を低減する潤滑油として利用できます。また、宇宙環境での材料劣化やトライボロジー特性についての研究はまだまだ少ないと言えます。私たちの開発する技術は、宇宙などの真空、高温の極限環境にも応用できるものなのです。

image

研究室のみなさん

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→重機械工業、自動車、造船、重電機、精密機械
  • ●主な職種は→設計、開発、研究、設備技術
分野はどう活かされる?

「設計工学・機械機能要素・トライボロジー」分野は、機械・電気・化学すべての分野で必要とされる領域であるため、卒業生の進む業種は幅広く、多くは設計・開発業務や設備技術業務に携わっています。

先生の学部・学科はどんなとこ

岡山大学工学部機械システム系学科は、工学・技術を支える基盤となる18の教育研究分野を揃え、将来、社会をリ-ドできる優れた研究者・技術者の育成に力を注いでいます。その中で「設計工学・機械機能要素・トライボロジー」分野では、あらゆる機械システムで使われる機械要素の機能・性能向上をトライボロジーで実現することについて教育研究を行っています。具体的には、カーボン系材料による極低摩擦現象の解明と機械要素への応用、医療や科学計測の現場で使われる装置を動かすアクチュエータなどのテーマで研究活動を行っています。

先生の研究に挑戦しよう

・カーボン系材料の創成
カーボン系材料は、木材等の身の回りの物質からも製造できます。種々の素材からカーボン系材料を作成し、その特徴や摩擦特性などを究明しよう。

・新しい歯車の歯面形状を創成
いくつかの制約条件を満たせば、歯車の歯面形状は世の中で使用されているもの以外にも成立します。接触面でのすべりを最小化できる歯車の新しい歯形曲線を考えてみよう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

トライボロジーがもたらす驚きの世界

石川憲二

身の回りの機械はトライボロジーなしには成り立たない!でもトライボロジーって何? トライボロジーとは、摩擦、摩耗、すべりに関する技術のこと。家電品は多様なトライボロジー技術の固まり。飛行機の設計は空気摩擦との戦い。人工関節も人工心臓も「滑り」が鍵。省エネ技術も宇宙で機械を動かすにも、とにかくトライボロジーが必要。そんなトライボロジーについてもっと知ってほしい! (日刊工業新聞)


トライボロジー概論

木村好次、岡部平八郎

トライボロジーとは、表面に関する工学と言われ、摩擦、潤滑、摩耗などに関する技術。本書は、機械系・化学系の大学生や若い技術者向けの入門書だが、高校生でもトライボロジーの基礎を理解できる。 (養賢堂)


下町ロケット

池井戸潤

町工場でロケットエンジンの主要パーツの開発に奮闘する技術者たち。小説として誇張されているところはあるものの、技術を極めることの面白さや技術者の思いなどがよく表現されている。技術にぜひとも興味を持ってもらいたい。 (小学館文庫)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。