触媒・資源化学プロセス

希少金属に代わる排ガス除去用の合金触媒開発に成功!~触媒開発は現代の錬金術


宍戸哲也 先生

東京都立大学 都市環境学部 環境応用化学科/都市環境科学研究科 環境応用化学域

どんなことを研究していますか?

AをBという物質に変換したいとき、化学反応の前後でそれ自身は変化しないが、化学反応を効果的にかつ、少ないエネルギーで進むようにする存在、それが触媒です。例えば、自動車の排気ガス中の有害物質を、環境に悪影響を与えない無害な物質に変換しています。空気からパンを作ったと言われるハーバーボッシュ法(アンモニア合成)でも触媒が重要な役割を果たしています。また、燃料電池も触媒がないと効率的に動きません。水から効率よく水素を作る上でも、触媒の技術は魔法のような働きをしており、クリーンな水素エネルギーを利用する上で不可欠なものです。触媒は現代の錬金術と言っていいのです。

安価で、広く手に入る金属を使って、人類の役に立つ高機能な触媒を作りたい

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私は環境浄化用触媒の設計・開発に取り組んでいます。その一例として、希少金属に代わる合金触媒の開発に成功しました。自動車排気口の触媒に用いる白金やロジウムなどの希少金属は優れていますが、コストがかかり、資源量も限られています。できれば安価で、広く手に入る金属に置き換えたいと考えています。例えば、銅とルテニウム(Ru)という金属を用いて合金を作ると、単独の銅やRuと比べて、すぐれた性能を示すようになります。また、クリーンエネルギー社会実現のための触媒の設計・開発にも取り組んでいます。そのために、水素を効率的に作る触媒やバイオマスを有用な物質に選択的に変換する触媒の開発も行っています。

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研究室の様子。学生が分析中

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→石油などエネルギー関連、化学メーカ、プラントエンジニアリング
  • ●主な職種は→研究開発、技術営業
  • ●業務の特徴は→日本国内にとどまらない仕事が多い。
分野はどう活かされる?

プラントエンジニアリング、触媒開発などに、活かされています。

先生から、ひとこと

エネルギーの高効率な利用、環境にやさしい物質変換プロセスの構築は、今後の社会の持続的発展のためになくてはならない技術です。「触媒」は、これらの技術の中で重要な役割を果たしています。また、化学者にとって化学結合の組み替えである化学反応を自在にあやつることは究極のゴールであり、「触媒」は、そのために有用なツールです。大学で深く化学を学び、「触媒」の化学の発展と開発に取り組んで見ませんか。

先生の学部・学科はどんなとこ

エネルギーの高効率利用、選択的物質変換、環境汚染物質の無害化に必須である高機能触媒の開発を通じて、その化学の理解を重視しています。必要な触媒化学に関する知識は、物理化学だけでなく、無機化学、有機化学、化学工学など多岐にわたります。学部ではできるだけ基礎を重視するとともに、現代社会での触媒の位置づけを理解できるようにすることを、また大学院では先端の研究成果にふれる機会を設けることを重視しています。

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学生が研究成果を発表しあうゼミの様子

先生の研究に挑戦しよう

環境汚染物質の浄化について、色素を使って実験するなど検討してみよう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

よくわかる工業触媒

触媒学会:編

触媒は最終製品として目に入ることが少ない縁の下の力持ち的な存在だ。具体的に身の回りで触媒がどのように使われているのか、どのように役に立っているのかをまず知って欲しい。そしてその上で、将来にわたって持続的な社会の実現には、エネルギー・環境の問題の解決は、避けて通ることができないこと、これらの問題の解決には化学の力で何ができるのかについて考えてもらいたい。例えば、自動車や燃料電池でも触媒の力は必須であり、現在進行形で高機能な触媒の開発が進んでいることなどを、この本を通じて実感してもらいたいと思う。 (日刊工業新聞社)


トコトンやさしい触媒の本

触媒学会:編

最終製品として目に入ることが少ない縁の下の力持ち的な存在である、触媒。この本では、触媒そのものの簡単な定義から、現在稼働している触媒を用いたプロセスの具体例が広く紹介されている。触媒やプロセスの稼働条件だけではなく、得られる化成品が身の回りでどの様に用いられているのかについても紹介がなされている。 (日刊工業新聞社)


大学の話をしましょうか 最高学府のデバイスとポテンシャル

森博嗣

作家でありながら、20年以上国立大学で勤務してきた著者が、大学のシステムや学びについて、内部を知る人ならではの視点で語る。大学で学ぶことについて、そして大学そのものについてを考えるきっかけにして欲しい。 (中公新書ラクレ)


フェルマーの最終定理

サイモン・シン

数学界最大の超難問と言われる「フェルマーの最終定理」。天才数学者ワイルズが解き明かし、証明を果たしたその半生と苦悩を追う。ボリュームのあるノンフィクション作品だが、一気に読ませる力を持つ。科学的思考の実例やそこにかかわる人間の葛藤の例として読んでみてほしい。 (青木薫:訳/新潮社)


分子レベルで見た触媒の働き 反応はなぜ速く進むのか

松本吉泰

化学反応を見るために必要不可欠な、触媒。その触媒の働きと固体表面で起こる現象について、比較的平易な言葉と内容で説明しているのがこの書籍。高校化学で教わった化学反応の実験を、触媒の側面から理解できる。 (ブルーバックス)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。