AをBという物質に変換したいとき、化学反応の前後でそれ自身は変化しないが、化学反応を効果的にかつ、少ないエネルギーで進むようにする存在、それが触媒です。例えば、自動車の排気ガス中の有害物質を、環境に悪影響を与えない無害な物質に変換しています。空気からパンを作ったと言われるハーバーボッシュ法(アンモニア合成)でも触媒が重要な役割を果たしています。また、燃料電池も触媒がないと効率的に動きません。水から効率よく水素を作る上でも、触媒の技術は魔法のような働きをしており、クリーンな水素エネルギーを利用する上で不可欠なものです。触媒は現代の錬金術と言っていいのです。
安価で、広く手に入る金属を使って、人類の役に立つ高機能な触媒を作りたい
私は環境浄化用触媒の設計・開発に取り組んでいます。その一例として、希少金属に代わる合金触媒の開発に成功しました。自動車排気口の触媒に用いる白金やロジウムなどの希少金属は優れていますが、コストがかかり、資源量も限られています。できれば安価で、広く手に入る金属に置き換えたいと考えています。例えば、銅とルテニウム(Ru)という金属を用いて合金を作ると、単独の銅やRuと比べて、すぐれた性能を示すようになります。また、クリーンエネルギー社会実現のための触媒の設計・開発にも取り組んでいます。そのために、水素を効率的に作る触媒やバイオマスを有用な物質に選択的に変換する触媒の開発も行っています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→石油などエネルギー関連、化学メーカ、プラントエンジニアリング
- ●主な職種は→研究開発、技術営業
- ●業務の特徴は→日本国内にとどまらない仕事が多い。
分野はどう活かされる?
プラントエンジニアリング、触媒開発などに、活かされています。
エネルギーの高効率な利用、環境にやさしい物質変換プロセスの構築は、今後の社会の持続的発展のためになくてはならない技術です。「触媒」は、これらの技術の中で重要な役割を果たしています。また、化学者にとって化学結合の組み替えである化学反応を自在にあやつることは究極のゴールであり、「触媒」は、そのために有用なツールです。大学で深く化学を学び、「触媒」の化学の発展と開発に取り組んで見ませんか。
エネルギーの高効率利用、選択的物質変換、環境汚染物質の無害化に必須である高機能触媒の開発を通じて、その化学の理解を重視しています。必要な触媒化学に関する知識は、物理化学だけでなく、無機化学、有機化学、化学工学など多岐にわたります。学部ではできるだけ基礎を重視するとともに、現代社会での触媒の位置づけを理解できるようにすることを、また大学院では先端の研究成果にふれる機会を設けることを重視しています。