人どうしがコミュニケーションするときには、言葉だけでなく、表情やジェスチャ、絵や写真などを使いますが、音楽は考えや意図を表出する非言語メディアの代表格と考えられています。音楽を使って人のコミュニケーション能力を高めたい。そんな思いで、私が取り組むのは、音楽情報学(音楽情報処理)分野で、数を計算するように、音楽を自由自在に計算する技術です。
旋律やリズムを、音楽の四則演算によって作り出す
我々は普段の生活の中で、例えば消費税、料理の調味料、家計簿など計算する時には四則演算を駆使して必要な数値を求めます。もし意図を込めたい旋律やリズムを、同様に音楽の四則演算によって作り出せたら、人の表現力はもっと広がるのではないかと思います。そうして、もっと手軽にいろいろな場面で音楽を使って自分の思考を表現できるようになれば、人は言葉だけでなく、音楽を通じても密にコミュニケーションできるようになるでしょう。
もしコンピュータが音楽を通じて人とコミュニケーションできるようになったら、世界はどんなふうに変わるでしょうか。どんなジャンルでも、どんなスタイルの音楽でも、楽曲の構成を認識できて、今は間奏の部分だ、ここはサビだなどが、わかるようになるでしょう。人の感情を揺さぶる音楽を創ることができるかも知れません。
その時、私が挑戦したい研究テーマが2つあります。1つめは、100年後も生き残っている音楽を、今現在の時点で判定することです。現在では、音楽の父と呼ばれているバッハでさえも、没したあとの約80年間は忘れられた存在でした。2つめは、いつまでも聴き飽きない音楽を創り出すことです。これまで数え切れないほど聴いた曲なのに、それでもなお新しく気付くことがあったという経験を持っている人は少なくないでしょう。なぜ音楽ではこのようなことが起きるのでしょうか。音楽情報学を駆使してこの謎に挑みたいと思っています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→情報サービス業
- ●主な職種は→SE、プログラマ、研究開発
- ●業務の特徴は→ものづくり
分野はどう活かされる?
やはりSE、プログラマ、研究開発等です。
どんなに大量の言葉を費やして音楽を表現しても、音楽そのものを再現することはできません。またその逆もありえません。音楽は音楽でしか伝達し得ない内容を伝達しているようです。音楽を通して人の知性の不思議に迫りましょう。
私は、複雑系知能学科知能システムコースに所属しています。このコースには、音楽をはじめ、ロボット、ビジョン、コミュニケーション、ゲームなどを研究対象とした教員が多く在籍し、人工知能や認知科学について広く学ぶことができます。教員には国内外で一流の研究者が揃っており、世界最先端の技術に触れることができるだけでなく、研究者的な考え方と行動を身につけることができます。研究者的な考え方と行動は、皆さんが将来どんな職業に就こうとも、社会に貢献して幸福な人生を送るために、最も身につけるべきものだと考えています。