ケミカルバイオロジー

がん創薬の決め手になる薬のタネを探せ!


浅井章良 先生

静岡県立大学 薬学部/薬食生命科学総合学府 薬科学専攻/創薬探索センター

どんなことを研究していますか?

ケミカルバイオロジーは、病気に関連するタンパク質等の生体内分子と、それに関わるであろう化学物質との相互作用について、理解を深めるための学問分野であり、化学と生物の両分野にまたがる研究分野です。化学物質とタンパク質の相互作用は、薬の主作用や副作用と密接に関わっているため、この学問分野の研究は、生命科学としての真理の追究のみならず、新しい医薬品のタネやその標的となるタンパク質の発見につながることが期待されています。

新たながん治療薬の出発点

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私は、がん領域を中心に、病気に関連する生体内高分子と相互作用する低分子化合物の探索や合成、作用の解析を研究対象としてきました。この低分子化合物は、人工的に合成された化学物質や、自然界にある天然物の中から選びぬかれたもので、薬のタネになります。どんな低分子化合物が、がんに関連するタンパク質へのシグナル伝達やがん免疫応答などをうまく行えるのか調べています。これが、新たながん治療薬の出発点となり、がん治療の発展に貢献できると期待しています。

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高校での出張授業の様子

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→医薬、化学、公務員、薬剤師
  • ●主な職種は→研究、開発、製造、審査等

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卒業生たちと

興味がわいたら~先生おすすめ本

病の皇帝「がん」に挑む 人類4000年の苦闘

シッダールタ・ムカジー

古代エジプトの記録によると、人類は数千年以上にわたってがんと闘っている。化学物質によるがんの治療法は比較的新しく、そのきっかけは皮肉にも第二次大戦中の毒ガスによる惨事であることや、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の発見の歴史のほか、近代の分子標的薬の誕生秘話などが書かれている。がんを治療するために努力を惜しまなかった多くの研究者や医師らによる、まさにがんとの化学戦争の歴史を知ることができる。 (田中文:訳/早川書房)


がん 生と死の謎に挑む

立花隆

膀胱がんを患った著者が、がんという社会問題をテーマにした一冊。この著者ならではの、極めて緻密な調査によってがんの実態に迫り、わかりやすく解説されている。最新本というわけではないのに、現在読んでも通用する考え方が豊富だ。 (NHKスペシャル取材班/文春文庫)


がん遺伝子の発見 がん解明の同時代史

黒木登志夫

がん研究者として著名な著者の一冊。現在の分子標的治療薬開発の礎となった、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の発見、および研究者たちの努力について知ることができる。二十年以上前に書かれた本でありながら、著者の色あせない研究成果を感じさせる。 (中公新書)


世界を変えた薬

佐藤健太郎

著者や医薬品メーカーや大学研究職などを経たサイエンスライター。薬も毒も多くは化学物質であるが、その化学物質と人類との関わりを、世界史の中で面白く解説している。医薬品の持つ力をあらためて考えさせられる一冊。 (現代新書)


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