陸上資源の乏しい我が国にあって、大陸棚の活用が注目されています。大陸棚は、大陸や大きな島の周辺の深さ約 200mまでの傾斜がきわめて平坦な海底です。ここは水産資源の宝庫であり、海底炭田や海底油田の開発も盛んです。さらに最近では、日本周辺海域の大陸棚を活用した再生可能エネルギーは陸上以上に潜在的な可能性が高いと注目されています。2014年、産学、官公庁が緊密に連携し、いくつかの県の海域が、海洋再生可能エネルギーのための実証実験をする実証フィールドとして選定されました。
海上に浮かぶ海洋発電の発電効率を改善するために
佐賀県からも唐津市加部島沖海域が選ばれ、佐賀大学の海洋エネルギー研究センターが中心になって参画しています。同センターで私は、海洋に存在する風や波浪を利用して発電する、波力発電,洋上風力発電などの再生可能エネルギーの研究を行っています。これらの海洋発電の設備は海上に浮かんでいます。発電効率を上げるためには、浮体動揺を低減する必要があります。そこで従来の計算法では困難とされていた、浮体にぶつかり無駄に放出されてしまう渦の影響を正確に考慮した流体運動の高速計算法を開発しました。この技術をもって、実証フィールド運営にも参加しています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→製造業(造船、自動車)
- ●主な職種は→設計、艤装、生産管理、IT
- ●業務の特徴は→機械系
分野はどう活かされる?
設計(船舶、自動車をはじめとした機械一般)や機械加工、製造において活かされています。
海洋エネルギーは波浪、潮流、洋上風力、海流、温度差などの分野に分かれています。いずれの場合にも海岸・海洋に構造物を作るため、海洋工学、船舶工学、海洋観測などの知識が必要になり、さらに、エネルギーを最終的に人間に役立つ形に変換するためには、動力変換(機械)、発電および電力変換(電気)、システム制御など様々な分野の知識が必要になります。海洋エネルギー研究センターでは、これらの分野の教育・研究を担当しています。
興味がわいたら~先生おすすめ本
プロジェクトX 挑戦者たち 海底3000メートルの大捜索 ~HIIロケットエンジンを探し出せ
海に落ちた物体を探すことは、例えジェット旅客機の大きさであっても、とてつもなく困難だ。海は広大で、深海になると光が届かないため、捜索手段は音響とごく狭い視野のロボットカメラに限られる。この本は、不幸にも起こったロケット発射事故の後、深海に落ちた長さ3mほどのロケットエンジンを執念で探し出しあてたプロ集団のドキュメンタリーだ。海洋探査では各種機器のケーブル曳航、音響装置による海中位置決めなどが必要だ。限られた時間内で目的を達成するためには、機器を駆使してデータを集める技術者、データ解析班、最も良い位置に船を動かす乗組員のチームワークが必須。理論と技術、それらを扱う人間の全てがうまく働いて目的が達成される様子が描かれている。
(NHKプロジェクトX制作班)
科学者の目
かこさとし
子ども向けに書かれた本だが、大人になっても学ぶことの多い本だ。著者かこさとしは、工学博士、技術者であり、科学者としての視点が鋭い。コペルニクスからアインシュタインまで、科学技術の発展に足跡をのこした41人の知られざるエピソードを記した評伝集。相対性理論や量子力学など、現代物理学に用いられる数学理論の一つである群論を十代の若さにして構築した仏国のエヴァリスト・ガロア。ガロアは褒め称えられて一生を過ごしたのか?否、彼は当時の世間に理論が認められることのないまま、決闘のため二十歳で亡くなったのだ。このような、科学者たちの発明と人生について深く語るものだ。 (童心社)