図書館情報学・人文社会情報学

人や組織がそれぞれ目指すべき情報サービスを“デザイン”する


湯浦克彦 先生

静岡大学 

どんなことを研究していますか?

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人々の生活をより便利に、企業・組織の業務をより高度にするための情報サービスを構築する方法について研究しています。例えば、受験生のみなさんは、どんな情報サービスがほしいですか。大学からどんな情報提供を望みますか。どんな情報の優先度が高く、丁寧に収集し掲載すべきか。また、情報量によってはコンピュータの応答速度に影響を与えないか、プライバシーに配慮しているか。こうしたことを考えて、さらには開発・設計コストも考えて、情報サービスを総合的に計画する技術と技法が求められます。

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その際、私たちが大事にしているのが、従来の設計者主導の設計ではなく、利用者との協働と対話を重視して開発する技法です。私たちは、利用者に設計者の意図を感じてもらえるようなプレゼンテーションシステムと、設計の側が利用者の感じ方を学習する共感分析システムもテーマにしてきました。

情報サービスの可能性をみてみたい

現在は、情報サービス構築法を研究しています。人はなぜ情報を欲するか、どういう人がどういう情報を欲するか追究し、情報サービスの効率的な開発方法や、ネット上での情報交換を促進させる方法、サービス同士を自在につなぐ技術的方法などを検討しています。

デザイン(設計)というのは、建築や機械などで昔から行われてきたことですが、コンピュータとネットワークを手に入れた現代の情報サービスでは、飛躍的に高い自由度が与えられています。そこで人間がどんなことができるかを見ていきたいと思います。

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毎年秋に4年生が中心となって、ビジネスコンテストを開催しています。大学内外から出場者を募り、起業家やコンサルタントの評価を受けます。最終成果を競うだけでなく、1ヶ月間にわたって互いに提案とスキルを磨き合うのが特徴です。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→情報サービス業
  • ●主な職種は→サービス・デザイナー
  • ●業務の特徴は→情報サービスの要件定義と開発管理
分野はどう活かされる?

大学で学んだシステム計画技法を用いて、情報サービスベンダーにおいてシステム開発の提案や開発を行っています。または、大学で学んだ情報システムの業務知識体系を生かして、様々な企業において、自社の業務を改革するシステムの提案と開発の推進を担当しています。

先生から、ひとこと

情報は進化している学問です。しっかり学ぶべき基礎もありますが、若い学生の感性やアイディアが新しいコンセプトや製品・サービスを生むチャンスに溢れています。

先生の学部・学科はどんなとこ

静岡大学情報学部は、AI技術やプログラミングなどの理系の観点と、ビジネスやマネジメントなどの文系の観点を併せ持った幅広い教育・研究を進めており、全国から様々な特性や関心を持った学生が集まっていますよ。

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研究室では毎年夏に知的探究の旅に出かけます。2019年度は三重県の五桂池ふるさと村へ(ドローンを用いて空中撮影しました)。他にも、ルーブル彫刻美術館(レプリカ展示)の見学と伊勢焼の陶芸体験を行いました。情報サービスは頭脳と言葉を使って構築することができますが、掌や指先など肉体を使って作品を作ることの難しさを知るのは貴重な体験でした。

先生の研究に挑戦しよう

自分の生活やそれに直接関係する企業のサービスの改革を考えてみましょう。例えば、身近な例を挙げると、どんな受験情報サービスがこれからは必要か構想し、大学などに提案できる形にまとめてみましょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

もし高校野球の女子マネージャがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら

岩崎夏海

企業経営において構成員それぞれの強みを生かしイノベーションを起こすことを説いたドラッカーの名著を、高校野球チームの活性化に置き換えて解説している。企業も野球も情報サービスも、一人のアイデアと力では成長を遂げることはできない。様々な人のそれぞれの特徴をどういう場所で生かすべきか、他人とその個性との出会いを大切にして、人と人との組み合わせで何ができるかを意識できるようになれば、情報サービスの設計において一番重要なスキルを得たことになる。 (ダイヤモンド社)


Running Lean 実践リーンスタートアップ

アッシュ・マウリャ

設計者が、モノ作りの部分は最小限に留めながら、構想の要点だけを利用者に迅速に示して利用者の反応を見つつ、取捨選択を繰り返し、モノを作っていく方法を解説している。全体の内容はインターネットベンチャー向きとも言えるが、実践的な知識が多いため、すべての新製品開発の役に立つ。 (角征典:訳/オライリー・ジャパン)


マッキンゼー流 図解の技術

ジーン・ゼラズニー

わかりやすい情報の図示の方法、特にスライドを用いたプレゼンテーションを効果的に行う方法について、ビジネス提案のプロフェッショナル集団が用いる技法を解説している。プレゼンテーションの初心者にも役立つ。 (数江良一、菅野誠二、大崎朋子:訳/東洋経済新報社)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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