社会心理学

誘惑に負けない自制心


尾崎由佳 先生

東洋大学 社会学部 社会心理学科/社会学研究科 社会心理学専攻

どんなことを研究していますか?

美味しいものをお腹いっぱい食べたい、インターネットで買い物をしたい、スマホゲームで遊びたい…現代社会には、たくさんの誘惑があります。こうした誘惑に負けずに、自制心を働かせるにはどうしたら良いのでしょうか。このような自制心の問題は、心理学において「セルフコントロール」と呼ばれています。実験や調査を通じて、セルフコントロールに影響する要因をつきとめ、より良い自制心の発揮のために役立てようというのが、私の研究課題の一つです。

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「将来のために勉強すべきなのはわかっているけれど、でもいまは遊びたい」といったように、二つの異なる気持ちのあいだで揺れ動く心を経験したことはありませんか? こうした心の状態を「葛藤」といいます。この葛藤を乗り越えて、「いま」の楽しさを求める気持ちよりも、「将来」のためになる行動を優先して実行するというのが、セルフコントロール(自制心)です。

当然のことですが、自制心の発揮は簡単なことではありません。なぜなら、私たち人間にとって、将来のことは遠くにかすんでしまいやすく、注意を払わなくなってしまいがちだからです。一方、すぐ目の前にある誘惑にはおおいに心惹きつけられて、釘付けになってしまいやすいのです。

さらには、「いまだけなら平気」「ちょっとくらいなら大丈夫」「あとでやればいいや」といった都合のよい言い訳をして、自分を甘やかしてしまうこともあります。

しかし、だからといって、つねに完璧にセルフコントロールすることが望ましいというわけでもありません。いつも自分に厳しく、すべての誘惑をしりぞけていたとしたら、それはそれで息苦しく、つまらない人生になってしまいそうですね。そしてあるとき、「もう耐えられない、どうにでもなれ!」といって、突然に自暴自棄なふるまいに走ってしまうという恐れもあります。

ですから、適切な自制心をキープしながら将来の目標に向けて努力を続け、かつ日々の楽しみも適度にエンジョイするといった、バランスのとれた生き方が大事になると思います。セルフコントロール研究を通じて、こうしたバランスのよい充実した生き方をサポートできればと願っています。

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海外学会にてポスター発表

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種→販売、メーカーなど多岐にわたる
  • ●主な職種→営業、人事、事務など
  • ●業務の特徴は→人と関わりあう仕事
分野はどう活かされる?

営業職をはじめ、どんな仕事であっても、社会心理学の知識を活かして、相手にわかりやすく情報を伝えるなど、様々な人たちと関係性を築く力が役に立っています。

先生の学部・学科はどんなとこ

社会心理学科では、社会心理学に関する様々な専門性を持つ教員が多数所属しています。学生は1年次からゼミに所属し、少人数のクラスで教員や学生たちと対話し、支えあいながら学習を進めることができます。

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ゼミの授業風景

先生の研究に挑戦しよう

自制心を鍛えることにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。勉強・運動・貯金など、何か自分が頑張りたいと思っていることを見つけて、具体的な計画を立て、できる限り毎日それを繰り返してみましょう。

例えば「数学の試験で良い成績をとる」という目標を選んで、「毎朝6時から30分間、自宅の机で問題集に取り組む」という計画を立てます。そして、それを実行している自分をしっかりイメージして、きちんと6時に目覚ましをかけ、毎朝30分の勉強を行います。これを2週間続けてみてください。自分自身でも、計画せずに試験勉強に取り組んだ時と、しっかりと計画を立てて実行した時の違いに驚くはずです。そして、自分をコントロールすることに自信がつくことでしょう。さらに、勉強以外の面においても、粘り強く頑張ることができるようになるかもしれません。

興味がわいたら~先生おすすめ本

自制心の足りないあなたへ セルフコントロールの心理学

尾崎由佳

衝動買い、食べすぎ・飲みすぎ、怠けぐせ、先延ばしなど、多くの人々が自制心の問題に悩まされています。どうすればこういった誘惑に負けることなく、自制心を働かせることができるでしょうか。セルフコントロール(自制)の仕組みと、自制心不足を解消する方法について、わかりやすく解説します。 (ちとせプレス)


スタンフォードの自分を変える教室

ケリー・マクゴニガル

どうして人はさぼってしまったり、誘惑に負けてしまったりするのでしょう。スタンフォード大学の人気講師が、意志の力について心理学的・医学的観点から解き明かし、実際の行動に影響を与えていくためのノウハウをわかりやすく教えてくれます。 (神崎朗子:訳/だいわ文庫)


マインドセット 「やればできる!」の研究

キャロル・S・ドゥエック

困難に面したとき、挫折してしまうか、それとも強く乗り越えていくことができるかは「マインドセット」次第ーーつまり、ものごとの捉え方で決まるのです。著者は、スタンフォード大学の社会心理学、発達心理学の世界的な権威であり、彼女の長年の研究成果がわかりやすくまとめられています。 (今西康子:訳/草思社)


やってのける 意志力を使わずに自分を動かす

ハイディ・グラント・ハルバーソン

コロンビア大学の心理学者が、動機づけや自己制御に関する科学的な研究成果をもとに、より良く目標達成していくための方法を提案します。目標を設定してもなかなか達成できない人や、人をサポートする立場の人に読んで欲しい本です。 (児島修:訳/大和書房)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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