英語が世界の共通語として、政治やビジネス、教育などの多くの分野で使われるようになったことで、さまざまな言語文化を持つ人々と英語で会話をするという場面が増えています。私は、アジア圏のビジネスパーソンなど英語以外を母語とする英語使用者と、日本人英語使用者の英語での会話の特徴を研究しています。そうすることで、共通語としての英語による会話の際にどのような言語スキルが必要になるのかを明らかにし、英語教育に還元できると考えています。
外国語教育に、多言語主義の観点を取り入れていくことで、多様な文化や言語を持つ人々が尊重しながら、共生する社会を目指していきたいと考えています。
救急医療現場での意思疎通で「視線」が果たす役割とは
コミュニケーションは言葉だけでなく、身振り・手振りや視線といったマルチモーダル(=複数の)な要素によって行われます。言語教育のほか、医療コミュニケーション、特に救急医療現場での視線によるコミュニケーションの研究にも取り組んでいます。
救急医療の現場では基本的に複数の医療者が医療行為を行い、言葉だけでなくマルチモーダルな要素を用いて、多くのことをお互いに伝達し合っています。1つの対象に注意を注ぐことを他者と共有することを「共同注意」と言いますが、医療者は言葉に加え、視線やジェスチャーなど用いて、同僚の注意を対象に向けさせます。視線追跡メガネを使用して、救急医療従事者の目の動きを追うことで、視線がコミュニケーションにおいてどのような役割を果たしているのかを研究しています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→教育、観光サービス
- ●主な職種は→中学・高校の英語教師、ホテル・航空会社のスタッフ
- ●業務の特徴は→言語スキルとコミュニケーションスキルを必要とする仕事
分野はどう活かされる?
外国語教育を学んだ学生の多くが、中学校・高校の英語教師となり、教育現場で活躍しています。応用言語学ゼミの学生は、言語スキルとコミュニケーションスキルを生かして、様々な言語、文化を持つ人々と接する機会の多い、ホテルや航空会社のスタッフとして、働いている卒業生もいます。
グローバル化した現代の私たちの生活は、否応なしに他の国々や“他者”とつながっています。不確実な現実に立ちすくみそうになることもあるかと思いますが、そのような中でみなさん一人ひとりが、社会のなかで自分自身をどのように位置づけ、どんな貢献をしていきたいのか考えてみてください。「自分には無理」などと決めつけず、また既存の枠組みとらわれず、創造的に学びつづけることが重要です。
本学の国際教養学部では、1年次に言語学、哲学、文学、社会学、心理学などさまざまな学問の基礎を学び、2年次後期からゼミに所属し自身の専門性を深めていきます。小規模大学の特徴として、学生と先生の距離が近く、また学生たちも先生方も学際的な(さまざまな学問間の)交流を大切にしています。ここで紹介しました研究も、医学部の先生方と協力しながら研究を進めています。また在学中に海外留学をする学生も多く、応用言語学ゼミの学生も半数近くが短期・長期で留学し、大学時代の一時期を海外で過ごしています。
興味がわいたら~先生おすすめ本
はじめての構造主義
橋爪大三郎
ソシュールという言語学者の理論から発展した構造主義は、簡単にいうと、あらゆる現象の基盤となる規則やルール(構造)を体系化して理解する思想を指す。それは言語学のみならず、社会学や人類学など多くの学問に大きな影響を与えた。構造主義によって私たちは、無意識に内面化している思想のルーツを辿ることができるだろう。また、他の学問と同様、言語学は、社会学や人類学、哲学など、様々な学問・思想と、相互に関わりながら発展してきた。本書は、言語学と諸学問の関わりを捉えるという意味でも、面白い。また、そうした学際的な視点は、グローバル化が進む現代において、外国語教育の課題に挑む上でも、非常に重要である。 (講談社現代新書)