特別支援教育

発達性協調運動症

動きの不器用さを持つ子どもたちのための運動プログラム


増田貴人先生

弘前大学 教育学部 学校教育教員養成課程 特別支援教育専攻(地域社会研究科 地域社会専攻)

出会いの一冊

なぜ人と人は支え合うのか 「障害」から考える

渡辺一史(ちくまプリマー新書)

相模原市障害者施設での殺傷事件の取材を通して、「障害者は生きている価値があるのか」という問いについて、丁寧に論じています。障害のある人への支援を考える時、うまく言葉にできない思いの根底の部分を言語化してくれていると思います。

こんな研究で世界を変えよう!

動きの不器用さを持つ子どもたちのための運動プログラム

脳の機能障害が原因の「動きの不器用さ」

手指の細かな操作や書字、スポーツや全身運動が上手ではないと、「(動きが)不器用」といわれます。動きの不器用さは、年齢や経験を重ねることで問題なくなる、と信じられてきましたが、近年そうではないケースも少なからずあることが知られてきました。脳機能のアンバランスさからくる発達障害のひとつで、動きの不器用さをもつDCD(発達性協調運動症)というものです。

小さな頃から自信を失うことが多い

運動面での課題は、うまくできれば楽しくなり、自分に自信をつけてくれますが、逆にできないことが続くと、みんなが自分の失敗を馬鹿にしているような気持ちになり、いろいろな活動への取り組みに強い苦手意識をもってしまったり、自信を無くしてしまったりする側面もあります。

DCDのある子は、幼児期や小学校という小さな頃から、身体を動かすあらゆる活動で失敗し、自信をなくしてしまうことが多く、本人の状況に合わせた適切な支援が必要です。

失敗を恐れず運動できる方法を考える

こうした子たちに、保育所や学校、家庭などでも、ごく自然なかたちで無理なく支援することはできないか、その方法を探るというのが私の研究です。

特定のスポーツに限定されない基本運動を重視した欧州での、低年齢児への取り組みを参考に、DCDのある子が、失敗を怖がることなく何度でもボールを投げたり打ったり、ホールを走り回ったりして、日常活動の中で苦手意識の克服につなげられないか、教育的支援を探っているのです。

教育相談時のボール活動
教育相談時のボール活動
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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障害があると、教育も含めて多くの活動への参加機会が妨げられる現状があります。特別支援学校では部活動が設定されていないところも少なくないですし、進学・就職といった進路だけでなく、習い事なども制限があるといえます。本研究は、運動発達支援という観点から、この課題を解決しより良質な教育につなげようとするためのものです。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「スポーツ種目横断型基本運動を活用した発達性協調運動症児支援の可能性と課題」

詳しくはこちら

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どこで学べる?
先生の授業では

空き時間に、特別な教育支援を必要とする児童の相談支援の場面で実際に手伝ってもらい、実践の具体的イメージを持ってもらうようにしています。イメージが持てると、その後の専門科目を受講しても、知識を関連付けながら考えられるようです。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
授業風景
授業風景
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な職種

(1) 小学校教員

(2) 中学校・高校教員など

(3) 幼稚園教員、保育士等

◆学んだことはどう生きる?

教員養成系学部ですので、卒業生の大半は小学校や中学校、特別支援学校、幼稚園の教員になります。個別の療育支援をできるだけ日常のなかに埋め込んだ教育支援を、子どもひとりひとりに応じて実践され、活躍されているようです。

先生の学部・学科は?

弘前大学は、地域の課題解決に向けた教育研究を通して世界につながっていくことを目指しています。教育学部特別支援教育専攻もその例外ではなく、附属特別支援学校と連携して、障害者スポーツの取り組みにも力を入れています。

また他大学でも発達障害のことは学べますが、DCD(発達性協調運動症)の教育支援についての研究者はそれほど多くありません。DCDを含む特別な教育支援を必要とする子どもへの教育相談支援として、学生が実際に地域の子どもたちを担当し毎週活動するなど、実践的な学びを重視するようにしています。

中高生におすすめ

君たちはどう生きるか

吉野源三郎(岩波文庫)

この本で示されている、自分の考えをしっかりと持つことの大切さは、今も大事にしています。コペル君とおじさんのやりとりのなかから、いろいろなものの見方や考え方の違いを、自分なりに深められると思います。


それしかないわけないでしょう

ヨシタケシンスケ(白泉社)

閉塞感を感じていた時に出会った絵本です。いろいろな選択肢があるのに、それを狭めているのは自分の固定観念だということに気づかせてくれました。


ハリー・ポッターと謎のプリンス(映画)

デイビッド・イェーツ(監督)

主役のハリー・ポッターを演じたダニエル・ラドクリフは、本作の公開を前に、動作の不器用さを主訴とする発達障害をカミングアウトしています。彼自身、靴ひもがうまく結べないことやきれいに字を書けないことがあること、そして「学校では何をやってもダメだから、つらかった」と語っていて、その背景から俳優の道を目指したそうです。

ただ、おそらく本作を見ても、彼からそのようなそぶりに気が付くことはできないでしょう。彼のように発達障害があったとしても、その人が日常であれ特別な場面であれ、困難を感じさせないような環境をどう作っていくかは、持続可能な共生社会を作るためにとても大切な視点だと思います。


先生に一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

スペイン。理由は欧州で初めて訪れ印象深かったことと、サッカー観戦が好きなこと。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

最近は、打首獄門同好会を聞いています。『日本の米は世界一』がお気に入りです。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

剣道部

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

イベントなどで使う「折り鶴」をひたすら折り続ける、というアルバイト。


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