皆さんは地球温暖化問題の原因は二酸化炭素であることを知っていますね。それでは二酸化炭素を見たことはありますか。見ることができませんね。でも、私たちは二酸化炭素の「量」を知ることができます。例えば、エアコンを1時間使ったら、発生する二酸化炭素の量を計算することができます。その計算にはエアコンの1時間当たりの電力消費量と、電力1kWh当たりの二酸化炭素排出量の値を使います。
環境問題の解決には「量」を知ることがとても重要です。なぜなら「量」を知ることによって、様々な対策をとることができるからです。私はこの環境の「量」を推計する研究を行っています。対象は二酸化炭素だけでなく、廃棄物や排水、排ガス、生態系など様々です。お金の情報も必要です。
環境の「量」を推計するのは手間がかかります。実際に直接測るだけでなく、アンケート調査、文献調査、インタビュー調査など様々な方法を用います。これまでに国内だけでなく、ラオス、スリランカなど様々な国へ行ってデータを取りました。データを得た後は、統計解析という手法を用いたり、数理モデルを作ったりして分析を行います。
得られた「量」は私たちに「気づき」を与えてくれます。「量」を知ることが環境問題の解決につながると信じて、日々研究を重ねています。
途上国の環境改善で、SDGsに貢献する
スリランカの天然ゴム工場の生産ラインで流れるモノの「量」、消費されるエネルギーの「量」を調査しました。工場全体のモノやエネルギーの「量」をまとめることによって、どこに無駄があるかがすぐにわかります。調査した工場では工業用水が無駄に使われていることがわかり、水をリサイクルするシステムを提案しました。
ラオスでは病院から出て来る廃棄物の量を推計しました。病院から出て来る廃棄物を調査して、人口や入院患者から将来の廃棄物量を推計するモデルを作り、導入すべきごみ焼却炉の容量を設計しました。
このように途上国の環境改善についての研究を通して、SDGsの達成に貢献します。
分野はどう活かされる?
研究室では研究活動を通して物事を総合的、システム的に捉える訓練をしています。そのようなシステム思考はどの業種でも必要ですので、様々な分野で活躍できると考えています。
大学での勉強がその後の人生を決めます。頑張りましょう。
東洋大学情報連携学部では、AI、IoT時代の新しい人材を輩出します。1年生では全員がプログラミングを学び、2年生以降は4分野(エンジニアリング、デザイン、シビルシステム、ビジネス)に分かれて応用を学びます。
興味がわいたら~先生おすすめ本
地球持続の技術
小宮山宏
エネルギーの変換には理論的に限界がある。そして、我々がそのエネルギーをどのように効率よく使えば地球を持続させることができるかを、省エネルギー、自然エネルギー、リサイクルエネルギーなどの例を挙げて説明してくれる。地球にとってよい技術とは何かを教えてくれる本だ。学生の皆さんがこれまでに抱いていた「技術」という物の視点をがらりと変えてくれるだろう。技術開発の方向性について大きな示唆を与えてくれる。 (岩波新書)