構造・機能材料

強い磁場で物質の新しい状態を物理学的に解明し制御する~強磁場物質科学


小山佳一 先生

鹿児島大学 理学部 理学科 物理・宇宙プログラム

どんなことを研究していますか?

私たちの研究室では、超電導コイルを用いた世界最強定常磁場で利用する実験装置を開発したり、地磁気の20万倍以上の強い磁場での物理現象を発見し解明したりしています。強磁場を用いて、新しい物質合成法を次々と発見し、開発してきました。

例えば、非磁性の原料AとB粉体を混ぜて、ある温度で強磁場を印加すると、自ら磁石の結晶になるように合成していくことを発見しました。そして今、その磁場合成の起源や得られた物質特性など未知の科学現象について、物理学を用いて解き明かしています。

強磁場はフロンティア科学

鹿児島大学理学部では、磁場に関わる興味あるテーマをほぼ自由に設けて研究しています。教授が研究テーマを与えるのではなく、学生自身が興味ある強磁場科学や磁気物理学のテーマを設定し、目標達成に向けて研究をしています。

現在までの主な研究分野は、(1)磁場による新物質の特性の解明、(2)磁気冷却物質の評価と応用、(3)磁気アクチュエータ材料の評価と開発、(4)強磁場を用いた新物質合成法の研究開発、(5)磁場による化学反応制御法開発、(6)磁場で酵母菌増殖の制御法開発などです。私も未だ知らない磁場、磁気、新物質の研究に、一緒にチャレンジしましょう!

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小山佳一先生。液体ヘリウム製造装置をバックに(鹿児島大学理学部HPから)

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→製造業(鉄鋼業、非鉄金属製造業、電子部品・デバイス・電子回路製造業)
  • ●主な職種は→技術職
分野はどう活かされる?

力学、電磁気学、熱力学、物性物理学の基礎を学び、実際に物質合成、実験装置開発、機器・化学分析をしてきた経験は、製造業での研究・技術職が行う素材開発、評価、デバイス設計等に活かされています。

先生から、ひとこと

強磁場を使った研究からノーベル賞級の新発見が多数生まれてきました。技術の発展ともに磁場の強さも上昇しており、強磁場環境には未知の現象が残されています。強磁場物理学分野ではこれからも新発見があると期待しています。鹿児島で、物理学の知識と技術を使って強磁場物質科学の新発見と解明、未来を豊かにする応用開発の基礎を修得していきましょう。

先生の学部・学科はどんなとこ

鹿児島大学理学部では、「研究する力をのばす!」を目的に、1年生から各研究室で学部学生の自主研究に取り組むサイエンスクラブを進めています。私の研究室のサイエンスクラブでは、学部1年生から学生の自主研究を少人数教育で指導しています。クラブ学生が数々の新発見をして、文科省主催サイエンスインカレ本大会にほぼ毎年出場して、研究成果を発表ししています。また、サイエンスクラブの自主研究から学生が発明者になって、特許も4件出願しました。大学院生は、東京大学や東北大学での実験、国際会議や論文で自分の研究成果を英語で発表し、各賞を受賞するなど活躍しています。私の研究室のサイエンスクラブ出身者は、その後大学院進学し、研究・技術職のプロとして活躍しています。

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小山研究室サイエンスクラブで、学部3年生の女子学生が磁場中熱処理装置を自作して高温試験をしているところ(鹿児島大学理学部HPから)

先生の研究に挑戦しよう

1)磁場中示差熱分析分析:デジタル温度計2本を用意して、1本は空、もう1本に融点70度程度のハンダと接触させて、ハンダを溶かしてみよう。融点と潜熱が評価できます。私は世界最高磁場中の示差熱分析装置を独自開発し、融点と潜熱の評価から磁場のエネルギーで磁石を分解させたり、合成したりできることを発見しました。

2)誘導起電力分析:コイルの中でいろいろな磁石を振動させ、誘導起電力の大きさを評価しよう。私は新しく合成した物質の磁気の強さを、誘導起電力を用いて評価しています。

3)磁気分析:磁石のそばに方位磁針を置いて、磁石の温度を変化させたとき方位磁針の向きがどのように変わるか評価し、磁石の温度と磁気の強さを考察しよう。私は同様の磁気分析で、新物質の磁気が消失する温度を評価してきました。

興味がわいたら~先生おすすめ本

新しい物性物理 物質の起源からナノ・極限物性まで

伊達宗行

私の研究は伊達先生の研究の流れをくんでいます。物質科学(物性物理学)のことについて、物質の起源から、物質の性質、磁気の世界、ナノ科学、極低温・超高圧・強磁場の極限科学についても記述されており、ぜひ読んでみてください。 (ブルーバックス)


ニュートン別冊 微分と積分

数学と物理学との結びつきをわかりやすく説明しています。高校では、微分・積分、ベクトル解析と物理学は数学と理科で分けられますが、両者は強く関係していて、物理学、特に力学は数学の考え方と解法が物理と数学の理解を深めます。 (ニュートンプレス)


ニュートン別冊 虚数がよくわかる

複素数、虚数は数学だけでなく、物理学でも重要な科学です。複素数、虚数の物理的なイメージができれば、波動現象、振動現象、量子現象がより具体的に理解できます。 (ニュートンプレス)


新しい物性物理 物質の起源からナノ・極限物性まで

伊達宗行

私の研究は伊達先生の研究の流れをくんでいます。物質科学(物性物理学)のことについて、物質の起源から、物質の性質、磁気の世界、ナノ科学、極低温・超高圧・強磁場の極限科学についても記述されており、ぜひ読んでみてください。 (ブルーバックス)


ニュートン別冊 微分と積分

数学と物理学との結びつきをわかりやすく説明しています。高校では、微分・積分、ベクトル解析と物理学は数学と理科で分けられますが、両者は強く関係していて、物理学、特に力学は数学の考え方と解法が物理と数学の理解を深めます。 (ニュートンプレス)


ニュートン別冊 虚数がよくわかる

複素数、虚数は数学だけでなく、物理学でも重要な科学です。複素数、虚数の物理的なイメージができれば、波動現象、振動現象、量子現象がより具体的に理解できます。 (ニュートンプレス)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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