土木環境システム

国境を越えやってきた、大気中の微粒子を追跡!雄大スケール環境計測研究


小林拓 先生

山梨大学 生命環境学部 環境科学科/医工農学総合教育部 生命環境学専攻

どんなことを研究していますか?

ユーラシア大陸から吹く偏西風は、黄砂、PM2.5などの微粒子を巻き上げ、日本、さらに太平洋、アメリカ大陸まで達します。これらは、広範囲で環境影響を引き起こすと考えられます。私たちはレーザー光を微粒子に照射しキラキラと散乱した光を計ることで大気中の微粒子の成分ごとの量を調べる装置を開発しました。

この装置を日本国内だけでなく韓国や中国の都市に設置し、また、はるか上空の様子を調べるために木曽駒ヶ岳や富士山麓など山岳域にも設置し、風にのってやってくる微粒子の様子を調べています。

地球環境を観測する衛星リモートセンシング技術

広範囲にわたる地球環境を調べるために、宇宙から地球を観測する衛星リモートセンシングという技術が活用されています。衛星に搭載したセンサは、自ら放射する電磁波や太陽から届く光を使って、地球上の陸地、都市、海、雲などの反射を観測します。その観果、森林伐採や砂漠化、農作物の状況や、都市部でのヒートアイランド現象がわかります。私たちは地球表面の7割を占める海洋上の微粒子の分布や性質を衛星リモートセンシングで調べています。

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学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→情報通信、地方公共団体
  • ●主な職種は→システムエンジニア、公務員
  • ●業務の特徴は→システム開発、行政
分野はどう活かされる?

どのような仕事であっても、問題を把握することが重要です。そういった意味で、調べることの重要性を学生時代に学んでいますので、それが仕事に生きていると考えています。

先生の学部・学科はどんなとこ

本学科は定員30名に対し教員が12名おり、ていねいな指導が特徴的です。教員の研究分野は、物理、化学、生物、地球科学と多岐にわたり、実験系から野外調査系、理論やモデル計算系まで幅広い研究スタイルの教員がいます。大気エアロゾルの専門家は、私を含め2名おり、私が光学特性、もう一人の方が化学特性に興味があり、同じ大気エアロゾルを違った観点で捉えることを学ぶことができます。

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大気エアロゾル(大気中を浮遊している微粒子)の光に対する性質を調べる測定器を調整しているところです。大気エアロゾルは気候に影響を与えているため、その特性を調べることが求められています。本研究室では観測データをみるだけでなく、実際の空の様子を観ることも大事にしています。

先生の研究に挑戦しよう

身の回りのものの色に注目して、なぜそのような「色」にみえるのか考えると面白いと思います。光、すなわち電磁波の特徴を知り(粒子としての特性も重要ですが)、光と様々な物質との相互作用(散乱や吸収、反射、ふく射)を知ることにより、ものが見える仕組みがよく理解できます。我々も「色」が見える仕組みを利用して、様々な情報を調べています。

興味がわいたら~先生おすすめ本

空の色と光の図鑑

斎藤文一、武田康男

美しい自然現象が、難解な物理学の知見で説明できることは素晴らしい。この本では、空の色だけではなく、様々な大気現象の写真とともにその原理を丁寧に解説している。土木環境工学の分野では、環境計測も研究テーマの一つ。光を利用して大気中や海洋中の微粒子に関する環境計測が行われているが、その測定方法の原理は光の散乱・吸収だ。例えば、光の散乱現象で最も身近なものが、空の色を呈するレイリー散乱であり、この本ではそのメカニズムが丁寧に解説されている。空の明るさを調べることで地球温暖化研究にもなる。読後はこれまでとは空の見方が変わるかも知れない。 (草思社)


不思議で美しい「空の色彩」図鑑

武田康男

空の色は本当に青い? 空をじっくり見上げて観察すれば、空の色のバリエーションの豊かさがわかる! 大気は空の色を決定する要因の一つだが、その大気は土木環境工学の研究対象の1つ。本書は、豊富な写真から空の色の不思議さを感じることができる。 (PHP研究所)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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