人生は選択の連続です。人は迷いながら日々、意思決定をしながら生きています。何時に起きるか、おやつは何を食べるかといった日常的な意思決定もあれば、進学するか就職するか、進学するならどの大学の何学部を受験するのかという、人生における重要な意思決定もあります。こうした選択の積み重ねが人生を形づくっているのです。私は意思決定を分析し、人はどういった損得勘定で行動するのかを研究しています。例えば、利得に関する時間選好の研究があります。人は将来の大きな利得より、目先の小さな利得を好む傾向があります。今すぐに投資するか、将来のために貯蓄するかなど、現在と将来を天秤にかけることを「時間選好」といいます。
人の視線から推定する!意思決定の研究
将来に得られる利得と、現在のリスクとを天秤にかけてみるという経済実験を行いました。その結果、利得を得るのが先になればなるほど、現在感じるリスクも高まるという、正の相関があることがわかりました。経済的な意思決定には時間選好が介在することが多く、時間選好の本質を理解することは、効果的な経済政策の策定に欠かせません。
新しい研究としては、人の視線を計測し、意思決定をする人の内面を推測しようと試みています。人の意思決定と視線には、密接な関係があります。どこを見ているかを観察することで、その人の意思決定過程を推測することができると考えられます。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→金融、メーカー、コンサルタント、ベンチャー企業
分野はどう活かされる?
ゼミの卒業生からは、金融政策や景気動向の分析、ビジネスデータの統計解析などで、理論経済学で学んだことが直接活きていると聞いています。さらに、経済学の特色でもある「制約つきの最適化問題」の考え方が、ビジネスシーンで役立ちます。複雑に絡み合う多くの要素を1つの数式に織り込んでいく理論経済学の思考方法が、日々の状況判断や戦略立案の基盤になっている実感があるそうです。課題解決にあたって、組織の意思決定や取引相手(クライアントさん)の意思決定などを複合的にとらえる必要がある時には、理論経済学で使う思考方法が頼りになります。
学問に触れることの価値は、すぐに役立つスキルを学ぶということよりも、思考方法を鍛えたり、教養として学問を身につけたりすることにもあります。そういう意味で、経済学らしい思考方法が課題解決の助けになることも多いと思います。
10代の頃は、自分の人生を形づくる大事な出会いがたくさんあると思います。しかも、あとから振り返ってみて初めて、「あの体験があるから今の自分がここにいるんだ」と実感するような出会いが待っているでしょう。一日一日を大事に生きて、そうした大切な出会いや体験をしっかり受けとめていってください。重要な選択を迫られる10代かもしれませんが、人生一度きりなので「最適な意思決定」などは存在しません。迷うことも多いけれど、あなたがあなた自身でいることが何よりも大事だと信じてほしいです。
一橋大学は、日本で最も伝統のある社会科学系研究大学として、常に学界をリードしてきた長い歴史と実績があり、人文科学を含む広い分野で新しい問題領域にチャレンジする豊富な教授陣にも恵まれています。
特徴としては、商学部、経済学部、法学部、社会学部の間の垣根が低いことも挙げられます。例えば、所属学部にかかわらず他学部科目も履修することができます。教育上の最大の特長は、ゼミナールを核とする少数精鋭教育です。一橋大学のゼミナール制度は、100年以上の歴史があり、必修であることと、また、平均10名未満の少人数で行われていることが特長です。