身の回りには、大気のような気体の流れや河川の水の流れなど大きなスケールの流れから、毛細血管を流れる血流のような非常に微小なスケールの流れまで、様々な流れがあります。近年、計算機のめざましい発達のおかげで、これまで調べることが難しかったミクロな世界の複雑な流れを、精度よく解析することができるようになってきました。私は、特に微小スケールの複雑な流れを、コンピュータシミュレーションによって解明することに取り組んでいます。
例えば、化学薬品の精製や製薬の工程においては、マイクロサイズの微小流路を有する生産システムが注目されており、その微小流路の流れを正しく把握する必要があります。また、曲がりくねった微小な管の中を通る熱・物質の動きや、小さな部品の表面にぶつかるコーティング剤の動きなど、効率性や安全性の要求からその動きを制御することが求められています。それらのマイクロ流路では、普通サイズの流れでは考えられない特有の問題が生じます。そのため、微視的なレベルでの流動現象を明らかにすることが課題です。
研究成果を組み込んだ熱流体シミュレーションソフトの開発を目指して
こうした流体や熱の複雑な流れの解明には、コンピュータシミュレーションが有用ですが、そのためには、シミュレーション方法を確立する必要があります。現在市販されているソフトウェアは、複雑な現象を必ずしも精度よく模擬できるものとは言えません。将来、我々の研究で得られた成果を組み込んだソフトウェアが開発され、多くの技術者によって使われるようになれば、実験をすることなくコンピュータ上で複雑な流動現象を再現することができ、ものづくりをする際にもコストの削減に役立つと言えます。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→自動車関連、重工、医療機器、電機など
- ●主な職種は→開発、設計、生産技術
熱や流体の複雑な流れを詳しく調べることは、容易なことではありません。しかし、コンピュータシミュレーションで普段見えない流れが目に見えるようになると、いろいろ興味深い現象が明らかになり、とても面白いと感じることでしょう。我々の身の回りにある空気や水の流れであっても、実はまだわかっていないことが多くあります。それを学術的に少しずつでも解明するために、私は学生と一緒に日々研究を続けています。この分野に興味を持った高校生の皆さんも、ぜひ一緒に研究をしてみませんか。
機械システム工学科には、熱流体工学分野の教員が8名所属しています。教育方針としては基礎を重視し、少人数制のクラスによる演習も実施するなど、熱力学や流体力学の本質的な理解を深めるように工夫されたカリキュラムを用意しています。