みなさんの日常になくてはならないスマホ、パソコン、ICカードなどから得られる文字、音声、位置などの情報の動きから、人間の動きや社会の動きをとらえて、実社会に役立つ知識を創造するのが、人文社会情報学の中の「情報社会学」という学問です。
例えば政治学は、富や権力の分配をめぐって人を動かすための学問ですが、情報の動きから人々の動きや社会の動きがわかれば、国会や地方議会、市民や行政などの作り出す政策を、より正しい政策にすることができます。これを「情報による自治」と呼び、情報通信技術を利用した電子政府、電子自治体になくてはならない研究です。
超高齢化社会にマイナンバーは必要不可欠と分析
私は情報社会学の観点から、情報自治をテーマに研究を進めています。その一例が、マイナンバーなどの公的な情報政策に関する研究です。マイナンバーとは、社会保障・税にかかわる国民番号制度です。当初、個人情報が一元管理されることが不安視されました。しかし、マイナンバーの利用状況などの研究の結果、今後ますます人口が縮減し、高齢化が拡大する時代、高齢者の所在不明や孤独死の増加、年金データの混乱など、近年頻発する問題を避けるためには、情報通信技術を利用するマイナンバーの必要性は高いという結論に至りました。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→地方公共団体、農協など各種団体、運輸、小売、金融、情報、広告など
- ●主な職種は→公務員、会社員(事務、管理、サービス、クリエイティブなど)
- ●業務の特徴は→人を動かす業務
分野はどう活かされる?
地方公務員としては、市民の動きを把握することに力を注ぎ評価される職員が多いようです。また百貨店に勤務した卒業生は、バイヤーやマネージャーとしてお客様との人間関係や、お客様の気持ちや声をとらえる仕事に大変役立っていると言っています。
情報社会学は、どのような学問分野とも関係を持つことのできる学際的な学問領域です。どのような研究がなされているか、インターネットの検索サイトや学術情報サイトなどで、自分で関心を持つキーワードを入力しながら、様々な先生方の研究へアプローチしてみてください。物理学が天文学と結びついて理論物理学や宇宙物理学を創造したように、次の時代の学問は、大学の名前や偏差値、学部名などの「切り取られた」学問の分野にとらわれてはいけません。皆さんの時代の学問に求められるものは、多様な学問分野の情報を活かして、学問の分野をはるかに超える「真実」を追求する姿勢です。
興味がわいたら~先生おすすめ本
第三の波
アルビン・トフラー
携帯電話もインターネットも普及していない今から40年前、1980年に書かれた未来予測で、大ベストセラーとなった。第三の波とは情報革命のこと。トフラーは、「なぜ、50年先の未来を予測することができたのか」を考えながら読んでほしい。 (徳岡孝夫:訳/中公文庫)