数学にある芸術美やロマンを求めて
「夢の空間」に思いを馳せる
私の研究は、代数幾何学と呼ばれる分野で始まりました。
図形や空間を調べるという意味では幾何学ですが、その図形や空間が、例えば放物線や円のように主に多項式によって記述されるために代数的手法が主になるという感じで、日本では昔から層の厚い分野です。
特に大学院生時代に、その代数多様体全体を表す「地図」のようなものに相当する「モジュライ空間」という、存在するかどうかも定かでない「夢の空間」に思いを馳せることから始まりました。
数学には芸術のような美やロマンを無意識的に求めてきた私として、そんな夢の空間をつくって眺めてみたい、そういう昔から人類がいどんてきた野望に自然と私もつづくことは自然で、K-モジュライという予想を立てるあたりから研究を始めました。
研究が別の理論につながった!
しかし一層ワクワクするのはその後の試行錯誤が、隠れた事実に時折気づいて思いがけない新鮮な驚きと感動を憶えながら、世界中に仲間ももたらしてくれたことです。
例えばモジュライ空間構成のために修士論文で行っていた計算が、指導教官であった森重文先生らの創られた理論体系に繋がったり、K安定性という空間の曲がり方を調べる微分幾何学の概念に繋がったり、同期(現東京大学 大島芳樹准教授)との議論で対称性の理論に繋がったり、昔から憧れのあった整数論的な話に繋がったりしたこともあります。
幾何学や解析学へと興味が広がる
私自身はもともと代数的な話がとりわけ好きでしたが、試行錯誤やいろんな出会いの中で繋がっている数学を堪能しているうちに徐々に幾何学や解析学にも関わるようになっているという訳です。
私の場合、数学者の職業を理解し目指すのに、中高時代に二つ大きな契機があったように思います。
一つは数学オリンピックでした。もともと競技的な面しか理解せずに挑戦を始めたのですが、結局、その結果よりも仲間ができたことがより大きい財産でした。
もう一つは、河合塾のK会で(私は3期生でした)数学者を目指す先輩方に出会えて、そこで本格的な数学とは何か、競技的な側面と異なる数学の学問的な深みを語っていただいたことは本当に貴重な体験で、かけがえのないものでした。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 数学 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? 色々ありますが、10代など若い頃はショパンやロマン派が特に好きでした。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? ピアノ・音楽系 |
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Q4.好きな言葉は? 探究 |