ソフトコンピューティング

人のような、しなやかな意思決定をするコンピュータは実現可能か


本多克宏 先生

大阪公立大学 工学部 情報工学科/情報学研究科 基幹情報学専攻

どんなことを研究していますか?

社会や自然界において、人や生物は周りの環境から得られる多種多様な情報・変化に柔軟に対処して、適切な意思決定をしながら進化を続けています。一方、コンピュータの計算速度や記憶容量などの能力が急速に発展したとはいえ、人のようなしなやかな意思決定をロボットや機械で実現することは、いまだに困難です。このようなあいまいで複雑な現象をコンピュータ上で賢く解決しようというのが、ソフトコンピューティングという新しい研究領域です。

あいまいな価値判断を模したファジィシステム

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私はソフトコンピューティングや知能情報学を専門に研究をしています。ソフトコンピューティングでは、人が得意なあいまいな価値判断を模したファジィシステムや、人の脳の神経回路網を模したニューラルネットワーク、生物の進化の過程をまねてコンピュータ自身に賢く進化してもらう進化計算などに取り組んでいます。インターネットでつながれた情報化社会では、ビッグデータが蓄積されていますが、人の力では、そこから有用な知識や知恵を見つけ出すには至っていません。この研究を通して、人よりも賢いロボットの頭脳を実現するべく、人工知能の高度化に挑戦しています。

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利用者の好みに応じて旅行先をおススメしてくれるシステム「くちこみ旅先ナビゲータ ワムトラ!」。本多研究室が開発しました。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→総合電機、情報通信、自動車メーカー
  • ●主な職種は→システムエンジニア、システム管理
  • ●主な業務の特徴は→人の生活を便利にするシステムのデザイン・設計
分野はどう活かされる?

総合電機では、銀行ATMのシステムや鉄道系電子マネー(Suicaなど)の管理システムなど、生活を支える様々な「便利な仕組み」の設計・改良に従事しています。自動車メーカーでは、自動運転につながる制御技術の開発に携わります。また、製造業では、いつ・何を・どれだけ作るかなどの生産管理で力を発揮しています。これらの業務では、目的を実現するための問題点を見つけ出し、その最適な解決策をコンピュータシステムに埋め込むデザイン設計が必要です。高度なソフトウェアの設計技術を駆使することで、調和のとれたシステムの設計が可能となります。

先生から、ひとこと

コンピュータというと、非常に速い計算速度と決して間違わない正確性を追求した「ハードコンピューティング」のイメージが強いかもしれませんが、コンピュータ知能が人の生活の一部になった今日、もっと人にやさしい情報化社会を実現するためには、人の意思決定に寄りそう柔らかな、ある意味で人のあいまいさを許容する「ソフトコンピューティング」が不可欠です。ロボットの賢い頭を実現することで、人の生活を豊かにする知恵を探してみませんか。

先生の学部・学科はどんなとこ

情報工学課程では、ロボットの賢い頭を実現すべく、人工知能に関連した幅広いソフトウェア技術をカバーしています。スポーツ中継の分析や人の動きの追跡、文字・音声・画像などを対象としたマルチメディア情報処理技術の開発から、ソフトコンピューティング技術を応用した情報推薦システムなどの開発まで、快適で安全な高度情報化社会を切り開くために、国際的な視野で最先端の情報科学分野の教育・研究を行っています。

先生の研究に挑戦しよう

ソフトコンピューティングや人工知能のテーマでは、コンピュータ上でのプログラミングが必須です。まずは、ゲーム感覚で、プログラミングに挑戦すると良いでしょう。また、エクセルなどでのデータ処理にチャレンジすることも、役に立つと思います。

興味がわいたら~先生おすすめ本

ロボットのおへそ

稲邑哲也、瀬名秀明、池谷瑠絵

人間と仲の良いロボットを作るには、ロボットにはどんな進化が必要だろうか。本書はロボット研究の最先端を紹介する中で、どうすればロボットが人間らしくなれるかという課題を「おへそをつくる」という言葉で表現し、賢いロボット実現のヒントを教えてくれる。人型ロボットやロボット玩具を例示しながら、脳科学から進化論まで、幅広い関連知識が垣間見られる。広く人工知能の可能性を理解する上でも、とっておきの入門書と言える。 (丸善ライブラリー)


イラストで学ぶ人工知能概論

谷口忠大

人工知能で動く仮想ロボット「ホイールダック2号」を主人公に、ロボットがどうやって賢い知能を獲得できるか、イラストを交えてストーリー仕立てで紹介する。人工知能に関連する基本的な理論がわかる。 (講談社サイエンティフィク)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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