実験心理学

「錯覚」が起きているとき、脳では何が起きているのか~人間の情報処理の方法


一川誠 先生

千葉大学 文学部 人文学科 行動科学コース/人文公共学府 人文科学専攻

どんなことを研究していますか?

同じ時間が流れているはずなのに、幼い時と比べて、時間があっという間に感じたことはありませんか。同じ大きさの図形を見ているはずなのに、片方が少し小さく見えることはありませんか。人間には、こうした様々な「錯覚」があります。私は、この「錯覚」という現象を研究することで、人間がどのような情報処理を行なっているのかを明らかにしようとしています。

錯覚による潜在的危険を知ることにつながる

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例えば、視覚情報の場合、人間は感覚器である目を通して入ってきた光を、脳内で分析し大きさや形を知覚し、さらに記憶と照らし合わせてそれが何なのかを認知しています。見え方の錯覚が起きる時、脳内でどのようなことが起きているのか、そしてそれは何故なのか。被験者に様々な画像を見せ、その見え方を研究することで、錯覚の特性がわかってきました。錯覚による潜在的危険を知り、社会全体や個人の生活の安全へとつながる研究です。

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東京での錯覚の国際Workshop2015で公演中

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→情報、電機、出版、流通、製造、医療、教育、広告、放送、研究、司法、公務
  • ●主な職種は→プログラマー、デザイナー、コンサルタント、企画、開発、営業、事務、教員、相談員、調査官、研究者
分野はどう活かされる?

人間の知覚や認知の特性についての理解を通して、インタフェイスの開発やプログラミング、企画に取り組んでいる人が多いです。人間に関わる数値データの取り扱いに慣れているので、調査データの取りまとめやマーケティングなどに活かしているようです。

先生から、ひとこと

人間は、自ら生活環境を大きく変える珍しい生物種です。長い時間をかけて自然環境に適応してきた人間の知覚認知システムは、新しい人工の生活環境に接するたびに、新しい錯覚を経験するということを繰り返してきています。そうした錯覚には、危険につながるものもあれば、生活の質の向上につながるものもあります。実験心理学は、そうした人間の知覚認知の潜在的な可能性についての最先端を知ることができる研究領域です。

先生の学部・学科はどんなとこ

実験心理学は、自然科学的な方法論に基づいて人間の行動や心的特性に対する洞察を深めていく研究領域です。人文科学と自然科学との融合に基づく最先端の学際的分野でもあります。

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国際学会の会場でアインシュタイン、ダーウィン像と

先生の研究に挑戦しよう

【テーマ例】
・感じられる時間は、どのような時に遅くなったり早くなったりするのか。
・感じられる空間は、どのような時に広くなったり狭くなったりするのか。
・コップや皿の色によって、飲み物や食べ物の味は変わるのか。

興味がわいたら~先生おすすめ本

錯覚学 知覚の謎を解く

一川誠

錯覚とは適当に生じるのではなく、物理的特性と知覚される内容が一定の規則性に基づいて乖離することだ。錯覚の生じ方を調べると、私たちの脳が少ない情報からどのように世界を構造化しているのかが理解できる。本書は、千葉大学・一川誠先生が、研究で取り扱っている錯視現象について、錯覚現象の面白さ、不思議さ、その現象の基礎について理解することの意義や可能性を、一般の読者向けにわかりやすく解説している。 (集英社新書)


ファスト&スロー

ダニエル・カーネマン

著者ダニエル・カーネマンはノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者だが、認知心理学を知るにはもってこいの本。タイトルの「ファスト&スロー」とは、人間の直感的な速い(ファスト)思考と、じっくり論理的に考える遅い(スロー)思考という意味で、この2つの組み合わせで人間は意思決定をするとしている。 (村井章子:訳/早川書房)


脳がシビれる心理学 ココロと脳はどこまでわかったか?

妹尾武治

コンピュータは美人がわかるのか、成績を簡単にアップする方法はあるのか、悪役を演じると本当に悪人になってしまうのか、あくびは犬にも伝染するのか、などなどの疑問を、実際の研究を例にして解説する。著者は九州大学の実験心理学の先生。軽い口調で、楽しく読める本。 (実業之日本社)


ヒューマンエラーの心理学

一川誠

人間とは、間違える動物である。それは認知的な処理能力に制約や限界があるためなので、修正が効かない。だが、認知の制約や限界を知って上手に活かせば、ミスを減らしたり、危険を回避したり、生活の質を向上させたりすることができる。心理学が解き明かした人間の認知の本質について解説している。 (ちくま新書)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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