都市の変化とその課題を調査。良い都市づくりに貢献したい
都心にタワマン、寂れる地方や郊外
私の研究は「都市地理学」に属します。皆さんが生まれてからの都市は「都心回帰」の時代で、都心部にタワーマンションが沢山建設され、多くの人が都心に住み、そして働くというあり方が一般的です。特に、世界都市である東京は、開発のための資金も、若い優秀な働き手も、国内外から集まっています。
一方で、地方都市の多くはこのような開発の波に乗れず、空き店舗が増えるなどの問題を抱えています。また、郊外住宅地の中には、空き家が増加したり、高齢化が進み地域コミュニティが守れなくなったりという問題が起きているところもあります。
私は、都市変化に伴って生じる住宅や社会の問題を調査し、その成果を基により良い都市づくりに貢献したいと考えて研究しています。
学生時代、都市の変化を目の当たりに
私がこうした関心を持つようになったのは、高校生の時でした。1990年代の水戸市中心部は、デパートや飲食店が栄えており、メインストリートはとても活気がありました。しかし、メインストリートから数本奥に入ったところは駐車場などが目立ちました。母校の向かいに高層マンションが建ったのはその頃でした。
その後、街中を歩いていると、新しいマンションが沢山建設されていることや、駅周辺で再開発事業が進んでいることに気づきます。筑波大学に入学した2000年頃には、デパートが撤退し、マンションに変わっていくとともに、空き店舗や空きオフィスが目立っていました。
都市が大きく変化する節目に、街中を観察していたことが、私の研究の基礎になりました。大学で都市地理学の講義を聞き、観察してきたことが都市化や都市の内部構造の変化を象徴する現象だと知り、これらを軸に研究の幅を広げてきました。
都市構造の変化とともに生活も変化
都市構造の変化を研究する上で、私は家や居住環境、地域コミュニティなど人々の生活に密着した分野に着目しています。高校時代は、国連高等難民弁務官の緒方貞子さんに憧れ、国際連合で働きたいと夢見ていたのですが、関連書籍の中にあった「Think globally, act locally」という言葉が心に残りました。
大学で地理学を学ぶうち、「都市が直面する課題には、世界規模のメカニズムが働いている上に、地域の特性を反映して現れ方が多様で複雑だ。日本や北米の都市で起きている変化や人々の生活に関わる問題に取り組むことが、私に合っている」と思うようになり、今日に至ります。
高校時代の夢とは違ってしまいましたが、国際学会での活動を通じて国際的に仕事をしたいという夢が叶い、都市研究者になって良かったと思っています。
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) 交通・運輸・輸送
(3) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
◆学んだことはどう生きる?
国土地理院やGIS系のコンサルティング会社、地図会社および地図を使う出版社など、地理学のスキル(GISやフィールドワーク、測量など)を活かして就職する方が比較的多いです。高校の地理教員、県庁や市役所などの公務員も多いです。交通やインフラ関係の会社などに就職する方もいます。博士後期課程まで進んだ場合は、大学の教員(研究者)になっている方が多いです。
地理学は、理系の方は「地球学類(人文地理・地誌学)」で、文系の方は「比較文化学類(フィールド文化領域・文化地理)」(私は担当していないのですが、「人文学類」にも歴史地理のコースがあります)で学ぶことができます。
地球学類と比較文化学類の人文地理では、共同で実験を行うこともあり、文系・理系の枠を超えた研究交流ができます。地球・比較文化ともに留学する学生も多いですし、野外実習の機会が豊富です。地球学類では英語プログラムの学生も一緒に卒業研究に取り組んでいます。
・都市の空き家問題、商店街の空き店舗問題などについての研究
・郊外住宅地の高齢化、地域コミュニティの活動に関する研究
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 地理学 |
|
Q2.感動した/印象に残っている映画は? 『流浪の月』(2022)、『ふたり』(1991)、『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)、『レオン』(1994)、『それでも夜は明ける』(2014) |
|
Q3.大学時代の部活・サークルは? 競技ダンスのサークル(国際会議などのパーティで一通り踊れるように) |
|
Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? ドラマ『美しい彼』および映画『劇場版 美しい彼〜eternal〜』 |
|
Q5.好きな言葉は? Think globally, act locally. 「有用とも美しいとも思えないものを家の中に置いてはいけない(ウィリアム・モリス)」 |