てんぎゃん 南方熊楠伝
岸大武郎
学校教育では決して習うことがなかった明治期の天才・南方熊楠の存在を、『週刊少年ジャンプ』に連載されたこの漫画ではじめて知り、「こんな型破りな天才が日本にもいたのか!」と衝撃を受けました。
東大予備門に落ち、正規に大学を卒業していないため学士号を持たず、生涯にわたり在野の研究者として活動した天才・博物学者です。大英博物館に入りびたりながら、あるいは日本に戻って郷里紀州の山中に分け入ってキノコ類やコケ類等の研究を一人続けた人です。
現在においても、生涯に1本でも世界的な有名科学雑誌『Nature』に論文を掲載できた人は「殿堂入り科学者」と言ってよいぐらい、Nature誌に論文が掲載されることは栄誉で難関なことなのですが、南方熊楠は日本人初の掲載著者であり、かつ現在に至り日本人として自著掲載論文数が最多で、未だにその記録は誰にも破られていません。
また、南方熊楠が精力的に研究した粘菌の研究は、その不思議な生態から現代でも最先端の研究対象として研究が行われていますが、熊楠は粘菌のもつ特有な「知性」みたいなものを何か知っているのではなかろうか、とさえ思わせてくれます。
さらに、熊楠が宇宙の本質として描いた曼荼羅をはじめ、記述物の全容は、天才数学者ラマヌジャンや天才工学者テスラが書き残した膨大なメモと同様に、現在もなお彼らの理解した域に達せず未だに解読しきれていないことも数多く残されています。
野人のようにエネルギッシュで、早く生まれすぎた知の巨人・南方熊楠の生き方は、「どこの大学に入りたいか」の前に、生涯を通じて「何を知ることを自分は楽しいと思えるのか」、あるいは「何を知ることに熱中できるのか」を意識することが大学で学ぶ上で肝心であることを、私たちに気づかせてくれます。
(ジャンプコミックスデラックス)
TOPページへ