グリーン・環境化学

ケミカルリサイクル

炭酸水でプラスチックを分解! 環境にやさしいリサイクル技術


本九町 卓先生

長崎大学 工学部 化学・物質工学コース

出会いの一冊

日本人は論理的でなくていい

山本尚(産経新聞出版)

山本先生は著名な科学者であると同時に、優れた教育者でもあります。本書は科学者としての識見にとどまらず、分野を超えて社会人にも多くの学びをもたらす一冊です。

日米両国の大学で教鞭をとられた先生が紡ぐ言葉には、日本の文化や伝統、日本人らしい感性を活かすヒントがちりばめられています。

日頃から抱いていた思索を、さらに高いレベルで言語化した本書からは、強い刺激を受けると思います。私自身も大変刺激を受けました。温かく見守り語りかけるような語り口からは、読み終えたときには胸に熱いものがこみ上げてきました。

こんな研究で世界を変えよう!

炭酸水でプラスチックを分解! 環境にやさしいリサイクル技術

CO₂の「いいところ」に着目

私は、二酸化炭素(CO₂)を活用する方法について研究しています。

CO₂は、よく「悪者」と言われますが、物質そのものに善悪はありません。だから私は、CO₂の「いいところ」を見つけたいと思いました。

いま、私が研究しているのは、「ケミカルリサイクル」です。ケミカルリサイクルとは、プラスチックを分解して、もう一度原料に戻す方法で、私は、プラスチックの中でも車の座席やソファー、枕などに使われるスポンジ状のプラスチック(ウレタン)を対象に研究しています。

「炭酸水」で1時間以内に分解

これまでの方法では、危険だったり高価だったりする薬品を使い、分解に数時間かけています。しかし私は、水とCO₂からできる「炭酸水」を使い、1時間以内に分解することに成功しました。炭酸水は酸性の性質を持っていて、そのおかげで分解が進みやすくなると考えています。

実は、炭酸水を使ったリサイクル技術は、ほとんど研究されていないのです。

再生ウレタンも成功

この方法は、コストがかからず、環境にやさしく、エネルギーの消費も少ないため、持続可能な社会づくりに役立ちます。さらに、分解後の原料から、これまでと同じ肌触りや柔らかさ、通気性を持つスポンジ(再生ウレタン)を作ることにも成功しました。

もしよければ、長崎大学へ再生ウレタンを見に来てください。見学を希望する人は、メール(cms_office@ml.nagasaki-u.ac.jp)で連絡してください。私は、みなさんの道しるべになれたらと思っています。

研究対象のプラスチック(ポリウレタン)でできた枕です。このほかにも、車の座席シートやマットレス、冷蔵庫や建物の断熱材の多くがウレタンでできています。
研究対象のプラスチック(ポリウレタン)でできた枕です。このほかにも、車の座席シートやマットレス、冷蔵庫や建物の断熱材の多くがウレタンでできています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「ポリウレタンの炭酸水を用いた加水分解による環境低負荷ケミカルリサイクル法の開拓」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
実験に用いる耐圧反応装置
実験に用いる耐圧反応装置
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品

(2) 薬剤・医薬品

(3) その他の化学系

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

(2) 設計・開発

(3) 品質管理・評価

◆学んだことはどう生きる?

自動車関連企業に就職した学生は、学生時代から研究に没頭するタイプだったため、その特性が強く発揮されています。塗料やシート、内燃機関など過酷環境で長期耐久性を求められる自動車の材料開発では、機能を追求した分子・材料設計を実践。さらに新素材の知見を取り入れ、モビリティの未来に貢献する提案にも挑戦しています。「新しいものを生み出す。創造する。」という工学の醍醐味を仕事にできていると思います。

先生の学部・学科は?

私が所属している学科では、多様な化学の研究を行っています。

新規な化学反応、抗がん剤の合成といった創薬、抗菌材料などの医用分野、生体センサー、免疫機構にかかわるたんぱく質や、生体が起こす反応を人工的に起こしたりといった生体関連分野、電池材料、小型かつ高容量の記憶媒体、半導体などの電子機器に関連する分野といった身近なところで使われる研究が多いです。

医学、薬学、水産学、情報科学、電気化学、環境学に通ずる研究に化学の立場からアプローチしています。今まで知らなかった化学に出会うチャンスにあふれています。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

汐見夏衛(スターツ出版文庫)

作者と郷里が同じということもありますが、我々が生きていくことを鑑みるときに一つの視点を与えてくれると思います。映画化もされていますし、とっかかりやすいのではないかと思います。


幕末青春グラフィティ Ronin 坂本竜馬

河合義隆:監督

笑いあり涙ありの幕末ものです。未開の土地の者と言われていた志士たちが圧倒的劣勢を科学でひっくり返すさまは爽快です。全編通して熱いのですが、最後に人のやさしさを教えてくれます。


だかあぽ

鷹城冴貴(ジャンプスーパーコミックス)

中高生にぜひ読んでほしい作品です。あきらめないこと、何かを受け継ぎ、伝えること。など大切なことを教えてくれます。

(結果は同じでも)「"できなかった"は"やらなかった"よりもほんの少しだけ価値があると。。。私はそう思います」。このセリフは中高生にとって大切なことだと思っています。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

今と同じく有機合成化学。工学の楽しみが詰まっていると思います。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

台湾です。温暖で人柄も優しい人が多くて、食べ物もおいしいです。

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

YMO、TMNや中田ヤスタカさん、光田康典さんを好んで聞いています。PerfumeのDream Fighterがお気に入りです。歌詞が中高生に向けて書かれていると思います。

Q4.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

ゲームはクロノトリガーですね

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

酒の肴とお酒とその場というものが楽しいですね。