被災したあなたを助けるお金とくらしの話 増補版
岡本正(弘文堂)
私が研究している被災者支援策について、一般の方向けに、最先端の法制度を踏まえて実践的にわかりやすく解説している本です。
国や地方自治体は多くの被災者支援策を用意していますが、被災して混乱している状況下で被災者自身がその情報を取得し、十分に利用して生活再建につなげるには、あまりにも種類が多く複雑です。日本全国どこで災害が生じるかわからない。そんな現代において、被災前にこういった本を読んで防災対策を行うことは、非常に大切です。防災対策とは、食料の備えや避難場所を把握しておくだけではない。これからの防災や被災者支援を考えるうえで、非常に有益な本です。
自然災害の被災者にとって必要な法的支援とは
災害対策に法律学も大きな役割
2016年4月、熊本地震が発生しました。最大震度7を含む地震が続く中で、大きな被害は発生していないかと心配しながら、夜を過ごしたことを覚えています。
このような大規模災害が生じた際、被災地では様々な問題が生じます。災害対策と聞くと、皆さんの多くは、医学や建築学、地震学といった理系分野の問題をイメージされると思いますが、災害が生じた際の行政の役割や被災者への支援策は法律で定められています。したがって、法律学も大きな役割を担うことになります。
住宅ローンを減免できる制度
私の研究している「自然災害債務整理ガイドライン」は、国の支援を受けた民間の制度であり、被災者の生活再建を支援するものです。
市民生活のルールである民法では、例えば住宅ローンを組んで住居を購入した人が被災した場合、そのせいで職を失ってもローン返済が免除されません。そこで、その対策としてつくられたこのガイドラインを利用すれば、ローンを減免できる可能性があり、被災者にとって大きな支えとなります。
被災者支援策として機能しているか
しかし、この制度ができてから10年程しか経過しておらず、本当に被災者支援に資する制度になっているのか、実態が明らかになっていません。
災害大国である日本で、どうすれば被災者にとって必要な法的支援を提供できるのか。実際に被災者に寄り添って活動している弁護士へのヒアリングや、行政の災害対策に関する調査を行い、現状を分析することで、今後のガイドラインの在り方や将来あるべき被災者支援策について研究しています。
中学生の頃から、「社会」「世間」とは何なのか、不思議に思っていました。そこで、それを知るために、社会のルールである法律を学びたいと考えて法学部に進みました。
法学部1年生のとき、市民生活に密着したルールである「民法」を学び、日常の「なぜ」を掘り下げて考えることができる点に魅力を感じました。特に買い物したときに、買主が欲しいと思っていたものと目的物が違うことを理由として契約をやめることができる「錯誤」という分野に興味を持ち、研究を始めたのがきっかけです。
「自然災害債務整理ガイドラインの運用実態調査およびその妥当性の検証」
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) 法律・会計・司法書士・特許等事務所等
(3) 金融・保険・証券・ファイナンシャル
◆主な職種
(1) 総務
(2) 法務、知的財産・特許、その他司法業務専門職
(3) 人事・労務・研修、その他人事系専門職
◆学んだことはどう生きる?
私の民法ゼミ出身者は、公務員、法律専門家、民間企業就職と、様々な進路に進んでいます。公務員として勤務している方は、裁判所事務官として適正かつ円滑な裁判運営を支えていたり、熊本県庁など地方自治体の職員として活躍しています。法律専門家としては、裁判官や弁護士、司法書士として、ゼミで学んだ民法の知識を実践の場で活用しています。
また、民間企業に就職した方は、会社間の契約を扱う法務部や会社の運営を支える総務部に所属し、ゼミで培った民法に関する知見や法律文書の読み込み・作成ができる力を活かしています。
熊本大学法学部では、法律学・政治学に加えて経済学の専門教員が所属しており、社会科学全般を学ぶことができる点に特色があります。さらに、例えば熊本地震のように熊本で生じ、かつ今後日本中のどこでも生じ得る社会的課題について、実務家や当事者のお話に触れつつ学ぶことができる科目がある点が強みです。
また、法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)を目指す人向けの特別コース:法曹コースも設置しており、実務家の支援も得ながらじっくりと学ぶことができる環境になっています。
【災害対策について】
住んでいる自治体で過去に生じた災害についてインターネットや新聞・文献で調べ、その経験を踏まえて新たに策定された防災対策について、まとめてみましょう。また、その対策は現代でも十分か、それとも現代版に修正すべき点があるか、検討してください。
【民法について】
住んでいるマンションの管理規約をつくってみましょう。その際、(1)住人の背景は様々である(多国籍、出身県・地域が違う、年齢や家族構成、生活時間帯も異なる)、(2)現在、ゴミ出しと騒音、ペットの扱いについて近隣トラブルが生じている、以上2点を前提としてください。できる限り当事者合意による問題解決を目指す民事問題について、多数決の原理や少数者の意見の尊重、異なる価値観の調整について考えてみましょう。

