経済統計

証拠に基づいた政策づくり

統計学で社会問題に貢献 証拠に基づいた政策づくりを目指して


廣瀬雅代先生

九州大学 理学部 数学科(マス・フォア・インダストリ研究所/数理学府)

出会いの一冊

サンプリングって何だろう 統計を使って全体を知る方法

廣瀬雅代、稲垣佑典、深谷肇一(岩波科学ライブラリー)

この本は、私が他の分野の先生方と一緒に書いた「統計のサンプリング」についての入門書です。サンプリングに少しでも興味を持った人に、最初の一歩として読んでもらえたらうれしいです。特に、私以外の先生が書いた章は、社会調査や生き物の調査など、いろいろな場面でサンプリングがどのように使われているかをわかりやすく説明しています。

ちなみに、統計というと、「パソコンのソフトウェアがあればできるから、難しい数学は関係ない」と思う人もいるかもしれません。でも、統計には数学的な考え方がしっかりと土台になっていて、それを知ることで、統計の本質や考え方がよくわかるようになります。この本の内容は入門レベルですが、そうした統計の「考え方の面白さ」も少しでも伝えられたらと思っています。

こんな研究で世界を変えよう!

統計学で社会問題に貢献 証拠に基づいた政策づくりを目指して

説得には根拠が必要

新しいことを知ったとき、みなさんはすべてそれをすぐに信じることができますか。たとえば、他の人に新しいことを話すとき、どうすれば納得してもらえるでしょうか。

研究だけでなく、社会でも、誰かを説得したいときには、「なぜそう言えるのか」という理由や証拠を示すことが必要になります。私の専門である「統計学」は、こうした科学的証拠を見つけるために様々な分野で使われる学問です。そして、その根拠を支えているのが数学です。

統計学で貧困の実態を見る

統計学は、社会の問題を考えるときにも役立ちます。たとえば「貧困」という問題。これは日本でも深刻で、特に子どもの貧困率が13.9%という調査結果(平成28年 国民生活基礎調査)をもとに、ニュースなどで大きく取り上げられました。

私は経済や社会の専門ではありません。しかし、海外で研究をしていたとき、より精度の高い統計方法を使った貧困実態に関する資料を見る機会があり、それを支える数学的理論の貢献に感銘を受けました。それ以来、統計学的研究の立場から日本の社会問題にも貢献できないかを考えるようになりました。

より精度の高い統計手法を

今取り組んでいるプロジェクトでは、「証拠に基づいた政策づくり(EBPM)」への貢献を目指しています。これは、しっかりしたデータや証拠をもとに、社会におけるルールや計画を作ろうという考え方です。そのために、数学を使ってより精度の高い統計の方法を新たに開発しようとしています。まだまだ道の途中ですが、日本だけでなく世界の研究者とも協力しながら、新しいことにチャレンジしています。

テーマや研究分野に出会ったきっかけ

高校1年生の時は文系志望で社会(特に歴史)が好きでしたが、高校2,3年生の時は、SARS流行中の既存薬の限界とそれに立ち向かう研究者の姿勢をニュースで見て感銘を受け、薬学への憧れが芽生えました。

大学生の時に、薬学と数学との接点として統計学に興味を持ち、大学院博士課程ではアメリカで研究をする機会を得て(アメリカでの環境のよさもあって)数理的研究に熱中するように。もともと理解が遅かったものの、「なぜ?」という好奇心と探求心は強く、それが研究への原動力になっています。

研究で訪れたアメリカの大学
研究で訪れたアメリカの大学
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「EBPMに向けた統計的推測法の理論的研究」

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海外での授業の様子
海外での授業の様子
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

◆主な職種

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先生の学部・学科は?

私が所属する研究所では、数学を産業や様々な分野に応用する研究が盛んに行われています。九州大学理学部数学科は、データサイエンスが注目される以前から、我が国における統計学の主要な研究拠点の一つとして知られており、特に数理と統計が密接に結びついた教育環境の土台があります。

また、統計学は多くの分野と関わることができ、社会に貢献する可能性を秘めた魅力的な学問です。数学を軸に据えることで、多様な価値観にも触れることができるでしょう。

先生の研究に挑戦しよう!

研究を支える基礎的な知識は、先人たちが積み重ねてきた知恵の結晶です。だからこそ、学校での勉強を決しておろそかにせず、基礎をしっかり固めることが大切だと思います。

そのうえで取り組むとしたら、たとえば公開されている統計データを活用して傾向を探るのも面白いのではないでしょうか。教育目的で無料で使うことができるオープンデータも存在するため、興味のある科目に関係しそうなデータが利用可能か自分で調べてみるのもよいと思います。また、そのデータをどのように加工すれば、傾向がつかみやすくなるかを考えてみるのも有意義だと思います。

中高生におすすめ

学習漫画 日本の伝記

(集英社)

小学生の頃、図書館でこのシリーズを借りるのに夢中になっていました。人によって視点は異なりますが、それぞれに何らかの信念があることを、幼いながらに感じ取ることができました。最後のページには補足などもあり、とても勉強になりました。


知の拠点【すぐわかアカデミア。】

わが国の研究所や研究センターでは、さまざまな学問の最先端の様子が、一般の方々や学生向けにYouTubeで広く配信されています。遠方の大学や研究機関に足を運ばなくても、気軽に多様な研究分野に触れられるため、とてもおすすめです。

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生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある

岡 檀(講談社)

自殺対策研究に興味のある方にお勧めです。それでなくとも、これからの生き方の参考にもなるように思います。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

数学や社会学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

アメリカです。研究目的で実際に滞在したことがありますが、多様性の中にある合理性や、議論を重視する価値観が自分には非常に合っていると感じました。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

海外ドラマを観たり、音楽を聴いたりするのが好きです。ドラマは言語の勉強になるだけでなく、その国の文化的背景を知る手がかりにもなり、とても興味深いです。音楽は、自分を奮い立たせたいときに、いつも力をくれます。

Q4.好きな言葉は?

失敗は成功のもと。本質をとらえよ。