環境材料・リサイクル

磁気分離

レアメタル回収に革新! 磁場を使った分離・選別法の開発


秋山庸子先生

大阪大学 工学部 環境・エネルギー工学科

出会いの一冊

低温「ふしぎ現象」小辞典 0℃〜絶対零度で何が起こるか?

低温工学 超電導学会(ブルーバックス)

私の研究で強い磁場を発生するために使っている強い磁石は、”超電導磁石”という磁石です。超電導磁石を動かすには、低温にしなくてはなりません。低温といっても0℃よりはるかに低い、絶対0℃に近い温度です。

絶対0℃に近い液体窒素や液体ヘリウムの温度では、どのような不思議な現象が起こるのか、また低温は生活のどのような場面に役立っているか、小学生から高校生まで楽しめる内容です。この本で、低温の世界の面白さに触れてみてください!

こんな研究で世界を変えよう!

レアメタル回収に革新! 磁場を使った分離・選別法の開発

水の不思議さに興味

私はもともと、高校生のころから物理と化学の実験が大好きでした。特に人の生活に一番身近な水の性質の不思議さに興味を持ちました。

大学では、固体の物質がどうやって水に溶けるのか、また水に溶解していたものが、どうやって固体として析出するのかという研究をしていました。その関係で、磁石を使って水を浄化するという“磁気分離”の研究に出会ったのです。

磁場を使えば環境汚染を浄化できる

最初は、磁石を使って、アオコや赤潮といった、水中の微生物を浄化しようという研究をしていました。これは、鉄粉や酸化鉄のような、磁石に引き寄せられる粒子の表面に、水の汚れのもとになっている微生物をくっつけることで、微生物を磁石で引っ張れるようにし、磁石で引き寄せて水をきれいにするという原理です。

この原理を使うと、微生物だけでなく、水中の金属イオン、染料、油、マイクロプラスチックといった、環境汚染の原因になっているさまざまな汚れの成分を除去することができることがわかりました。

効率的なリサイクルにも

現在は、この研究をさらに発展させ、磁石を使って種類の異なる物質を分けるという研究を行っています。

たとえば、アルミニウムと銅と鉄の粉が混ざっていたとします。そこに磁石を近づけると、鉄だけが磁石にくっつきます。しかし、この方法では残りのアルミニウムと銅を分けることはできません。しかし、普通の永久磁石よりも強い磁石を近づけると、アルミニウムは磁場に引き寄せられ、銅は反対に磁石から遠ざかろうとします。このように、すべての物質は、強い磁石を近づけると、磁石に引き寄せられたり、遠ざかろうとしたりします。

このような性質を使うと、複数の種類の物質を分けることができます。この方法を使って、現在国内で資源が不足しているレアメタル、レアアースを種類ごとに分別したり、種類の異なるプラスチックを分別して、効率よくリサイクルしようとしています。

マイクロプラスチックに磁性粒子を加えたあと、下にネオジム磁石を置いて、磁気分離する様子です。
マイクロプラスチックに磁性粒子を加えたあと、下にネオジム磁石を置いて、磁気分離する様子です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

もともと、中学時代は文章を読んだり書いたりすることが好きで、数学は苦手で、国語や英語が得意でした。しかし、高校に入ってから物理や化学の実験があまりにも楽しかったので、数学の成績が悪いにもかかわらず、理系に進みました。

同時に、高校では科学者の随筆をいくつか読み、小説とは異なる魅力を感じました。おそらく、数式が苦手だった(というか数式が何の役に立つのかわからなかった)ので、数式を使わずに文章で理系の内容を理解することで、物理や化学に対するワクワク感を感じたのだと思います。

大学に進んで一番驚いたのは、量子力学の世界です。分子や原子よりもはるかに小さい、目に見えない世界が宇宙のように広がった感じがしました。ここでは難しい数式が出てくるのですが、まず数式が出てこない易しい本から始めて、徐々に専門的な本を読むことで理解しようとしました。大学に来て初めて、数式が何の役に立つのかということに気づいたのです。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「レアメタル回収に革新をもたらす「回転磁場誘導選別法」の開発」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 電気・ガス・水道・熱供給業

(2) 重電系

(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) 設計・開発

(2) 基礎・応用研究、先行開発

(3) 生産技術(プラント系)

◆学んだことはどう生きる?

・電力会社や、発電所を作る会社で、発電所の設計や発電の安全管理に携わっている卒業生がいます。
・JAXAに就職して、宇宙ゴミの回収に関する研究をしている卒業生がいます。
・環境省や地方自治体の公務員として、地球環境の保全に関わる仕事をしている卒業生がいます。
・化学メーカー、家電メーカー、自動車メーカーで最先端材料の開発をしている卒業生がいます。

先生の学部・学科は?

大阪大学工学部の環境・エネルギー工学科は、SDGs(持続可能な開発目標)に関係する幅広い研究テーマを扱う学科です。3年生の初めに、環境工学コースとエネルギー量子工学コースの2つのコースに分かれるので、もしやりたいことがはっきり決まっていないけど、なんとなく地球環境やエネルギーについて研究したい!という人がいれば、広く環境とエネルギーに関する内容を勉強したうえで、コースを決めることができるので、おすすめします。

先生の研究に挑戦しよう!

磁石に引き寄せられる物質と遠ざかる物質を調べてみよう!

やじろべえの両端に色々なもの、例えば1円玉や10円玉、ミニトマト、プラスチック、ゴム、などをくっつけて、強めのネオジム磁石をそっと近づけてみましょう。世の中の物質は全て磁石に引き寄せられたり、遠ざかったりする性質を持つことを実感できます。

どのような物質が磁石に引き寄せられ、どのような物質が遠ざかるかをまとめてみましょう。そして、どのようなことに磁石を使うことができるか考えてみましょう。

中高生におすすめ

水とはなにか ミクロに見たそのふるまい

上平 恒(ブルーバックス)

人の生活に一番身近な水の分子構造から、その不思議さを知ることができる本です。化学と生活の関わりに興味がある人におすすめします。


雪を作る話

中谷宇吉郎(平凡社)

水の分子構造が、雪の持つ独特の美しい構造を創り出します。雪を作ることなんてできるの?と思うかもしれませんが、大変な苦労を重ねて雪の結晶を作ったり、観察したりした中谷博士の随筆です。理系のみならず文系の人にもおすすめします。


キュリー夫人伝

エーヴ・キュリー(白水社)

長い伝記ですが、高校のときに読んで、キュリー夫人に憧れを持つようになりました。小さいころから夢中になれるものを持っていたキュリー夫人の人柄に触れることができる本です。特に理系に興味を持つ女子学生におすすめします。

一問一答
Q1.感動した/印象に残っている映画は?

古いフランス映画ですが、『ぼくの伯父さん』(ジャック・タチ監督・脚本)に出てくる犬と音楽が好きです。

Q2.大学時代の部活・サークルは?

点訳サークル

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

旅をすること、美術館巡り

Q4.好きな言葉は?

雪は天からの手紙(中谷宇吉郎)