倒産した人や企業を救うセーフティネット「倒産法」
お金が返せなくなった人や企業の処理
私は「倒産法」という分野を中心に研究しています。「倒産法」と聞いてもピンとこないと思いますが、お金が返せなくなった人や企業の処理について検討するものです。その処理の手続には大きく分けて「清算型」と「再建型」の2種類があり、前者は倒産者の財産をすべて売り払ってしまうもの、後者は倒産者の生活や事業を建て直すことを目的とするものです。
お金を貸した人の最低限の保護「清算価値保障原則」
とはいえ、救済のためなら何でもできるわけではありません。ここでは事業を再生させるとしましょう。例えば、A社がB社に100万円を貸していたところ、B社が倒産して、A社(債権者)にお金が戻ってきません。しかし、B社が事業再建を選択した場合、事業を再生することで利潤が少しずつでも生まれ、A社は満額を返してもらうことは難しくとも、いくらかは返してもらうことができるはずです。
ただし、その金額があまりに少なすぎるのは望ましくないでしょう。例えば、B社をすぐにスクラップすれば(=清算型の手続)A社が10万円をもらえるのであれば、B社の事業再建した場合もA社は最低でもこの価値(清算価値)をもらえないといけないと考えられます。これが清算価値保障原則と呼ばれるもので、お金を貸している人を最低限保護するためのルールです。私は現在この原則に関心を持って研究を進めています。
定まらない清算価値の解釈
清算価値というのは一義的に定まりません。解釈の余地があり、論者や国によってもその中身が変わりえます。例えば、清算型の手続といっても、いつもスクラップしてしまうわけではなく、B社が有している事業を事業体としてそのまま売却できればより高い価格で売ることができるでしょう。そうすると、清算価値は高くなるかもしれない。ただ、これを考えるためには、そもそもなぜ清算価値を債権者に保障すればよいと考えられたのだろうか…、といったことを考えなければなりません。
以上のような問題を、私はアメリカやEUと法制度を比較しながら研究しています。
もともと倒産法に興味があったわけではなく、学部ゼミの先生(後に指導教授となる先生)が専門とされていたため、たまたま入り込んだ、というのが正しいかと思います。
しかし、やってみますと、倒産法にはセーフティネットとしての機能があり、社会で失敗した人や企業に再スタートの機会を与える、そんな「優しい」法律の側面に気づきます。私は幼少から病弱で、決して順風満帆な人生を歩んできたわけではないので、今から振り返ると、倒産法に弱者に寄り添う側面があることには、何か巡り合わせを感じています。
「「債権者一般の利益」概念の研究ーEUにおける新たな概念との比較ー」
◆学んだことはどう生きる?
倒産法のゼミということで、主に金融業界で活躍する学生が多いように感じます。実際、ゼミで扱う判例などでも銀行や保険会社が当事者として出てきますし、勉強を進める中で自然と興味も湧きやすいのかなと感じます。また、倒産法は司法試験の選択科目ともなっていますので、司法試験を目指す学生もいます。
本学法学部は、法律科目の専任スタッフがとても充実していますので、倒産法に限らず、種々の専門科目(発展科目)が開講されています。そうした発展科目を学部生でも履修し、研究できる点は強みと感じています。
| Q1.一番聴いている音楽アーティストは? サカナクションです。中でも好きなのは「ネイティブ・ダンサー」です。 |
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| Q2.感動した/印象に残っている映画は? 印象に残るのは『シン・ゴジラ』です。エンタテインメントとしても非常に面白いのですが、法学部の教員としては、非常に多く入れられている会議シーンを見ると、やはり正当に物事を決めるためには、面倒でもきちんと手続や会議を履践しなければならない、と再認識します。 |
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| Q3.好きな言葉は? 「カタツムリ ソロソロのぼれ 富士の山」という小林一茶の句です。一見するとこれは「コツコツ努力しなさい」という意味に読めるのですが、サリンジャーの『フラニーとゾーイー』の終盤では全く異なる形で引用されます。すなわち、目標を意識せず、淡々とやることそれ自体に価値がある、ということです。目標を意識し過ぎると、勉強や仕事がその程度のものになってしまう、ということでしょうか。 |

