生物は水なしで生きてはいけません。それを研究するのは主に生物学の役割ですが、溶液化学と物理学からも様々なことがわかってきています。例えば、タンパク質のような生体分子が細胞膜の表面にある受容体レセプターと結合し、うまく効果を発揮する上で、水分子が大きく影響することが近年明らかになってきました。その影響力の大きさを高精度に計算できるようにもなってきています。
しかしそれでもまだその理由は分子レベルでは完全にはわかっていません。生命現象における水の動的な役割を明らかにすることで、それまで別々に考えられていた生物学と溶液化学と物理学の融合した研究の大切さが高まっています。
カオスや乱流など、平衡でない現象も分析
私は化学物理の理論を専門にします。特に追求するテーマとして、生命現象における水の役割に取り組んでいます。また伝統的に研究されてきた固体や結晶などの「固い物質」と異なり、液体や食品などの「柔らかい物質」を意味するソフトマターなどについて調べています。
もう1つ追求しているテーマは、「非平衡現象における階層性」です。非平衡現象とはカオスや乱流のように、平衡状態から遠く離れた状態で起こる現象を扱います。あるいは水分子の動的な動きも、同様に非平衡な現象として扱っています。これらの研究からは、様々な工業的な応用が考えられます。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→計算機ソフト、フィルムメーカー、会計書士、大学、学習塾、化学工業、事務機器メーカー
- ●主な職種は→ソフト開発、会計書士、教員、研究開発、任期付き研究員
- ●業務の特徴は→大学で教育、研究に携わっている。
分野はどう活かされる?
私たちの研究室では、学部4年生でも新しい理論を開発する現場に立ち会えます。理論を作るということは、基礎から順に筋道を立てて、現実も問題に応用する事が重要です。私たちの研究室で身につけたその考え方は、大学の教育研究のみならず、企業での様々な業務で活かされていると思います。
日本の大学の中で新潟大学の理学部物理学科は、化学物理、特に液体の理論的研究で優れています。
興味がわいたら~先生おすすめ本
ブラウン運動
米沢富美子
中高校で習うブラウン運動は、熱運動などによって引起される物体の不規則運動のこと。1827年、ブラウンが水の中に入れた花粉から出た微小粒子の不規則運動から発見したとされている。そこから物質はこのような微視的な自由度のもつ熱運動と同種のゆらぎをもち、そのゆらぎ自体が物質のミクロな性質解明の糸口を与えるんじゃないかと、アインシュタインなど多くの物理学者が注目。分子・原子の存在の実証につながった。この本は自然現象としてのブラウン運動を対象に、物理学史においてブラウン運動の果たした役割、その歴史的経緯から応用までをわかりやすい文章で解説する。不規則で無秩序な微視的運動である分子運動発見の息づかいが感じられる。 (共立出版)