知能ロボティクスという学問分野は、「人型のロボット」に限った研究をしているわけではありません。人間が普段生活する現実の環境の中で、センサを利用して情報を得て、同じく現実の環境に対して働きかけを行う知的なシステムの実現を目指した学問分野です。コンピュータやロボットなど、実際に行われている研究は非常に幅広いですが、「現実の環境の中で」「自律的に動作できる」システムを目指すという点は共通しています。現実の環境の中で最も重要な存在は、人間です。その意味では人間と上手くコミュニケーションを取ることのできるシステムを目指した研究が注目を集めています。
人間が何を求めているか判断する技術
私は、人間共生システムと称されるような知的システムを専門にしています。環境や人間をよく観察してそれらが何を求めているのかを的確に判断し、それに対するサポートを適切な形式、適切なタイミングで提供できるシステムです。
その一例が、画像認識の研究です。様々なセンサからの画像情報で現状を把握し、相手の立場に立ち、意味のある情報が何か判断して提示するといった技術の開発を行っています。具体的には、常にユーザの視界内に情報提示し、ユーザがその情報にするアクセスできるような情報投影システムです。また、知能システムが人間とどのように信頼関係を築くか、好印象を持ってもらえるかといった研究も行っています。
このような知能システムを発展させていくことで、いちいち指示しなくても気を利かせて手助けしてくれる優秀なパートナーが、そばで見守っていてくれるような環境が生まれると期待されます。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→情報サービス業
- ●主な職種は→システムエンジニア(SE)、プログラマなど
- ●業務の特徴は→ソフトウェア開発を中心に、コンピュータに関わる業務が多い
分野はどう活かされる?
プログラミングやシステム設計・開発・保守業務など。特に、「人間との関わり」を常に意識したエンジニアとして活躍されています。
知的なシステムを作ることは、結局のところ、人間の知的能力の仕組みを解明し、再現や拡張をすることに他なりません。人間の持つ「賢さ」に興味がある人はぜひこのテーマに取り組んでみてください。
情報工学科では、特に「知能ロボティクス」に特化した教育を行っているわけではありません。(学内の別学科である未来ロボティクス学科の方がカリキュラム内容としては合っているかもしれません。)しかし、本学の情報工学科は、コンピュータのソフトウェアだけではなくハードウェアにも強い情報処理技術者を育成するカリキュラムがその特色として挙げられます。この点は知能ロボティクス研究においても重要なアドバンテージになると思われます。