教育心理学

おとなも子どももいじめを乗り越え、連鎖を防止するための研究


戸田有一 先生

大阪教育大学 教育学部 初等教育教員養成課程 幼児教育専攻

どんなことを研究していますか?

「いじめのない学校」ではなく「いじめを見逃さない学校」「仕返しではなく仲直り」をめざし、いじめ理解や対策の国際的な共同研究を行なっています。世界中の研究者と共同研究をすることによって、国・地域によるいじめの傾向の違いや、どの国でも共通してみられる側面、各国の取り組みなどを知ることができます。

「仕返し」ではなく「修復」を

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いじめなどの「仕返し」には、ある意味「公平」を求める考え方があります。しかし、子どもたちのなかに「仕返し」ではなく「修復的な対話」をし、「加害者が敵ではなく、いじめをなくす」という活動をしている子たちもいます。そういう子たちの志を活かす活動をしていきたいと思っています。

いじめ対策の研究を通じて、虐待や体罰も含め、逃げられない関係の中での攻撃の問題についての理解を深め、人間関係や社会のあり方を変えていく先生方や、子どもたちを支援しています。子どもたちが、未来を変えてくれると信じています。

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ユネスコのシンポジウムで分科会の司会を

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な職種は→幼稚園・保育園・認定こども園の先生
  • ●主な業種は→行政(市役所・厚生労働省)
分野はどう活かされる?

市役所や厚生労働省に就職した卒業生は、園の現場をわかって仕事をしてくれていると思います。大学教員になった卒業生もいます。

先生から、ひとこと

教育心理学の研究から言えることは、学びや仲間関係には、いろいろな要因が関わっているけれど、どれも「決定的ではない」ということです。人生に関わる心理学の研究成果の多くは、人生に関することわざや名言などと似たところがありますが、それも、絶対に正しいわけではありません。自分の人生に影響を与える様々な要因の渦の中にあっても、最後は、「自分のことは自分で決める」ということを大事にしたいと思います。

先生の学部・学科はどんなとこ

なかなかユニークな研究を行っている研究者が多いと思います。特に、学校・園、保護者などに直接的に貢献する研究を行っていることが特色だと思います。

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オーストリアのブラームス博物館を訪問

先生の研究に挑戦しよう

いじめやネットいじめなどの問題に生徒らが主体的に取り組む「ピア・サポート」「スマホサミット」などの実践があります。そのような実践について、調べてみたり、見学したり、参加してみたりしてはどうでしょうか。

興味がわいたら~先生おすすめ本

心理学の名著30

サトウタツヤ

フロイト『精神分析入門』、フロム『自由からの逃走』、フランクル『夜と霧』など、古典から新しいものまで、心理学の名著30冊を紹介。その中で、心理学の歴史・理論・方法論について、わかりやすく、しかも、本質をおさえて書かれています。この本を読んだ上で、紹介されている原著にあたることをお勧めします。 (筑摩書房)


クオ・ワディス

シェンキェーヴィチ

私が大学生の時に読んで感銘を受け、人生の大きな岐路での決断に影響を与えた本です。 (木村彰一:訳/岩波文庫)


Tackling Cyberbullying and Related Problems Innovative Usage of Games, Apps and Manga

Yuichi Toda、Insoo Oh

韓国の先生と私の共編著です。難しい英文ではなく、高校生でも読めると思います。ネットいじめなどの問題に、ゲームやマンガをいかに活用するのかについて、日韓両国の研究者が具体的に論じています。この分野の研究を若い方が後継してくださることを願っています。 (Routledge)


TED「良識ある行動をとる動物たち」

各分野の専門家による非常に興味深いプレゼンテーション「TED」。中でも、このプレゼンテーションを紹介したいと思います。争いをいかに仲直りや協働に転換していくのかについて、動物学者が専門的な立場から語っています。 (フランス・ドゥ・ヴァール)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。