世界の森からSDGsへ ―森と共生し、森とつながる
柴田晋吾(上智大学出版)
森や自然の有形無形の恵み(生態系サービス)は、それらが無料であったことからどんどん失われてきました。森の持続可能な利用を進めるためには、これらの様々な恵みの価値化(可能なものはお金の価値を生むこと)を図ることが重要です。
本書は、そのためのPES(生態系サービスへの支払い)という仕組みや林業を森林の全方位のビジネスに拡げる「森林業」という革新的な考え方を解説し、アメリカ、ヨーロッパ地域など世界各国において行われている数々のイノベーティブな取り組みについて、実際に現地を訪れて取材し、撮影した豊富な写真とともに解説している貴重な一冊です。自然環境保全に関心がある高校生の皆さんにも読みやすいように平易に書かれています。
環境マーケットを含むPES(生態系サービスへの支払い)と森林の全方位ビジネスである「森林業」の展開
自然=無料が自然を失わせてきた
環境問題は、SDGsの実現の多くに関わり、社会経済分野とも直接的に関わるため、分野横断的かつ多様なステークホルダーが参画しないと解決は難しい問題です。しかしながら、環境問題を乗り越えないと、人類の未来もありません。
森林や自然環境に対する多様な人類のニーズのバランスを取ることは、簡単ではありません。その一つの理由は、自然が生む環境の恵み・価値の多くが長年無料であると考えられてきたため、どんどん失われてきたからです。
環境から恩恵を受けた人が支払う
そこで、一つの解決策として、環境の価値にお金をつけて商品のように取引ができる仕組みや恩恵を受けた人が支払う仕組みが考案されました。例えば、河川の下流の水利用者が上流の土地利用者に対して、水をきれいにすることに対する支払いを行うような仕組みです。
生態系サービスへの支払い(PES)と呼ばれるこの革新的な仕組みは、世界的な関心を引いて取り組みが増えています。海外では企業などを巻き込んで、観光客やレクリエーション利用者から、環境保全目的のための自主的な支払いをお願いする取り組み(訪問者贈与制度)も行われています。私も新潟県湯沢町のご協力を得て、同様な社会実験を行いました。
木材だけの林業から、全方位森林ビジネスの「森林業」へ
関連して、日本でも森林サービス産業と呼ばれる森林空間のレクリエーション利用を行うビジネスが広がってきており、欧州でもグリーンフォレストジョブと呼ばれる森林を利用する新たな産業が出てきています。
私は47年前の学生時代から一貫して木材生産だけでなく森の様々な恵みをビジネスとする「森林業」を提唱してきていますが、ようやく「森林業」は現実のものとなってきました。上記の環境マーケットなどのPES(生態系サービスへの支払い)も「森林業」に含めて考えれば、PESと「森林業」は一体のものと考えられます。地域の様々な森林産品や伝統と自然を求める都市住民に光を当てると、持続可能な地域づくりにおいてこれから「森林業」の果たす可能性は極めて大きいと考えられます。
「ツーリズム・レクリエーション利用者による支払いのあり方についての研究」
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◆ 「森林環境税」は環境価値の高い豊かな森をつくる国民協働の契機に(読売オンライン/※リンクは研究室HPより))
◆ 「基調報告『生態系サービスビジネス』の黎明 諸外国に拡がる、野生・自然と健康に根差した新たなサービス経済」(フォレスト・サポーターズホームページ/※リンクは研究室HPより)
◆主な職種
(1) シンクタンクの研究員
(2) 国際機関の研究員
(3) メーカーの従業員
エコ・フォレスティング
柴田晋吾(日本林業調査会、2006年)
「森林業」の草分けをして知られる筆者の先見的な著作です。本書を読んだ皆さんは、世界各国で環境を守る考え方と木材生産を進める考え方が衝突を起こして大きな政策変化を招いた歴史に衝撃を受けることでしょう。この本は自然と共生する社会づくりに貢献したい皆さんがこれからの進む道を決める出会いの本になるかもしれません。
世界の森を守り、活かすための新たな方策は何でしょうか。それは、森に対する視座を広げ、多様な考え方を取り入れることです。本書は、欧米主要国など世界の森林管理思想と参加・協働型の政策形成の歴史と理論、そして、複眼的な視点で森林環境の価値に着眼するPES(生態系サービスへの支払い)や木材生産だけでなく、非木材森林産品や森林サービスを含めた全方位の森林ビジネスである「森林業」を推進することの重要性と世界のその事例を説いています。
環境にお金を払う仕組み PES(生態系サービスへの支払い)が分かる本
柴田晋吾(大学教育出版)
自然環境の恵みである「生態系サービス」に対してお金を払う仕組みである「PES(生態系サービスへの支払い)」という革新的な取り組みが生まれた背景、仕組み、実際の事例について解説したPESについての初めて解説した本です。環境がただでなくなりつつある今日、アメリカでは湿地小河川クレジットなどの環境マーケットが定着しており、脱炭素、ネイチャーポジティブな社会づくりのために、カーボンクレジットに加えて、生物多様性クレジットなどの環境マーケットも動きだしております。環境を守るためにあなたもPESを勉強してみませんか。

