中国では、辛亥革命以前に限っても、ひとりの人間が数百年かかっても読み切れないほどの大量の文献が残されています。それらの文献を読み解きながら、その時代の人々が何を考え、どう生きていたのかを明らかにしていくのがこの学問です。
近年は、「新出土資料」を利用した研究がホットで面白い分野です。前世紀の後半以後、中国では戦国時代、秦、漢期の墓から大量の書籍が出土しています。『論語』や『老子』といったよく知られた文献も出てきていますが、これまで全く知られていなかった文献もたくさん出てきていて、われわれの想像以上に、この時期の人々が考えていたことが広く多様であることがわかってきました。
竹や木のふだに書き記された関係資料が中国で多く発見
私が研究しているのは諸子百家の思想、特に儒家の思想の歴史です。近年では、竹や木のふだに書き記された古い時代の書籍が数多く発掘されていて、これまでの研究では秦の始皇帝が天下を統一して以後に作られたと考えられていた書籍が戦国時代の墓から出てきたり、すでに滅んでしまってその内容を知ることのできなかった書籍が新たに発見されたりしています。現在は、これらの新資料が与える知見をもとにして諸子百家の時代の思想の歴史を再構築していく作業に取り組んでいます。
一般的な傾向は?
- ●業務の特徴は→卒業生の就職先は様々で、公務員になった人もいれば、出版関係や金融関係(銀行)などに就職した人もいます。具体的な業務も様々です。
分野はどう活かされる?
専門を直接に生かした職業となると、学校の先生(特に国語や社会の)に限られますが、ただ、文学部の授業では、常に「自分はどう考えるのか」を問われるものですから、ここで鍛えられた思考力や表現力、問題解決のスキルは何をするにしても役立っているはずです。もちろん、この分野の研究者として国内、国外で活躍している卒業生もいます。
よりより考え方・生き方を見出していくためには、時代も場所もこえて「他者」と対話し、自分自身の考え方を反省する必要があります。この「他者」には、ある時代を真剣に生きた過去の人々も含まれます。しかし、普通の人が様々な言語で書かれた過去の文献とじかに向かい合いながら、彼らと対話することは困難です。その仲介役をするのが、この学問領域の使命だと考えています。
文学部人文学科の哲学・思想文化学コースに中国思想文化学の専門が置かれています。中国思想文化学の現在のスタッフは3名で、中国の古代から近世、さらに日本漢学までの領域をカバーするスタッフをそろえた研究室は、日本では数少ない貴重な存在です。
大学院を設置する本学は、研究者養成の使命も担っていますので、学部4年間、大学院(博士前期課程2年と博士後期課程3年)を一貫した教育プログラムを用意しています。学部の専門教育は、演習を中心としており、漢文読解能力や文献分析能力の向上を図っていきます。大学院では、原典のより高度な読解を通じて、漢文読解能力のさらに向上をさせるとともに、特に博士後期課程では、世界に通用する論文を自ら書きあげられるように指導をしています。なお、同じ哲学・思想文化学コースには、印度哲学やチベット仏教学の研究者も在籍しています。